-ここから始まるメイズ・ワールド-
”変わりゆく変わらないもの“を体現したピースフルなソウルバンド、メイズのデビュー作[*1]である。バイオグラフィーで触れているが、本作の前にグループはマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)のライヴの前座を務めるまでに成長。改名してのデビューとなっているわけで、当然ながらマーヴィンの影響を受けた作品となっている。
-すでに完成された世界観-
メイズの基本はファンクであり、それを巧みなメロディとポップな感覚で聴きやすく、かっこよく料理するというものだろうが、そのとおりのラインナップが肩を並べている。
いきなり時代を感じるギターから始まる①「Time Is On My Side」は、もうすでに完成されたメイズ・ワールド。自然と名曲「Feel That You're Feelin'」が見えてくる。カッティングとスラップ・ベースに、フランキーの熱めのヴォーカルが乗る。決して白人マーケットには受け入れられないのだろうが、それでいい。エモーショナルなヴォーカルに心を奪われる。
続く②「Happy Feelin's」は後年まで人気の1曲。へヴンリーなリズムにメンバーのコーラスが優しいスロウである。この楽曲がこの1stに収録されていることから、いかにメイズが変わらずに進化していったかを読み取ることができる。
-黒人マーケットに響く-
③「Color Blind」はベースの効いたファンク。歌い方もワイルドで、②のようなポップ路線ではなく、彼らのコアな部分といえるだろう。
メロディアスな楽曲に戻るのは④「Lady Of Magic」。温かい雰囲気に心が安らぐ。ミディアムの⑤「While I'm Alone」はシングルリリースされ、R&Bチャート21位を記録。やや地味な印象もあるが、こういった楽曲が受け入れられてのヒットというのが、いかにもメイズらしい。
-Joy And Painを思う-
本作で一番人気なのは⑥「You」ではないだろうか。彼らの代表作「Joy And Pain」の原型とは言い過ぎだろうが、限りなく近い。イントロのリズムからギターが主旋律を奏で始め“ん!?インストの楽曲か!?“と一瞬考えた後から乗ってくるフランキーの歌声。歌い出しまで2分を越える訳だが、待ち長いわけではなく“待ってました!”と毎回言ってしまいそうになる。
そして最後を飾るのは組曲のような⑦「Look At California」。イントロのフランキーの憂いのある叫びから、ボサノヴァのような部分があったり、パーカッションの音からファンクになったりと展開に驚かされる。全体的に覆っている乾燥したカリフォルニアの砂漠を思い描かせてくれる、喉が渇いた感じがするのは、タイトルに引っ張られた訳ではなく、曲の気だるさがもたらすものであることは明白である。
-短くはない全7曲-
全7曲と一瞬短いような気もするのだが、ファンクバンドらしく、1曲あたりの時間が長い。8分を越える楽曲が2つアルなんて、デビュー作では考えられないような気がする。でも、今となってはメイズだもんねと大きくうなずけてしまうのは、彼らの存在の大きさに他ならない。
(2022.08.05)
[*1]デビュー作である本作の時点でのメンバーは以下のとおり。
Frankie Beverly(Vo.G),Robin Duhe(B),Roame Lowry(Conga),Sam Porter(Key),Joe Provost(Dr),Wayne Thomas(G),McKinley Williams(Per)