1. 『Live In New Orleans』
  2. MAZE featuring FRANKIE BEVERLY
  3. artist
  4. privatesoulmusic
『Live In New Orleans』(1981)1981
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Review

-世界のどこでも味わえるありがたさ-

“メイズならライヴだ!”と、声高に叫ぶ人も多いだろう。ライヴで積み重ねてきた彼らの力量を思うともっともな言葉で、筆者も同じように感じる[*1]。筆者のような世界の極東に住むものでもその醍醐味の一部を味わうことができるのが、パッケージ化されたライブ盤ということになるのだろうが、メイズにおいてそれが初めて具現化されたのが本作[*2]である。

-オーディエンスとの一体感-

司会者!?のようなアナウンスから登場するフランキー。1stからの人気曲②「You」から始まる。初期のどこか垢抜けない感じがワイルドさを生み出し、それがさらにライブで活きてくるといった風情。ファンキーでありながらメロディアスなこの楽曲から始めるという、ファン心理をおさえた選曲である。最新アルバムのオープニングを飾った③「Changing Time」も同様な雰囲気。哀愁漂うギターのイントロももちろんきちんと再現し、爽快・滑走感を感じることができる。
 そしてこのライブでの音源がさらにファンを生みだしたと言っても過言ではない④「Joy And Pain」へ。イントロでフランキーが会場に“put your hands up”と促しているのはもちろんだが、そうでなくてもみんな歌い出したであろう、最後のみんなでの合唱がたまらない。この会場に居たかった!と心から思ってしまった。
 それにしても③④というイントロの長い2曲を並べるとは!このじらし感がより“聴きたい・歌いたい心理”を増幅させるに違いない。

-ライヴのチカラ-

イントロが始まって楽曲がわかると、会場から歓喜の声。それだけ愛されていると実感できるのは⑤「Happy Feelin's」である。そして新作から一番イナタイ雰囲気があった⑥「Southern Girl」へ。シングルとしてももちろん数字を残しているこの楽曲だが、こういったファンキーな楽曲にフランキーが多少荒々しく歌い上げるスタイルは、昔からのファンへ向けているように感じる。筆者は当初、そこまで好きな曲ではなかったのだが、このライヴでさらに力強くなる姿を感じて好きになった。ライヴのチカラを感じずにはいられない。
 間に長尺の⑦「Look At California」が入るが、その後の⑧「Feel That You're Feelin'」も同様にライブでさらに昇華。スタジオでの音源よりも、明らかに分かるほどBPMを上げることで、踊りやすいリズムに生まれ変わる。また、サビでのメンバーによるコーラスが楽しげに聞こえてしまい、そこでもほっこりさせられてしまう。
 その後、いったんライブが終了するようになるわけだが、アンコールのように⑨「The Look In Your Eyes」を披露。今度は一転して洗練された優しい楽曲になるわけだが、最後にフランキーが“Thank You,New Orleans”といってからの歓声はさすがに大きい。きっと現場はもっと盛り上がっていたのだろうことが伝わってくる。  

-スタジオ音源を4曲収録-

ライブ音源は上記で終了するわけだが、本作にはスタジオ音源が4曲入っている。
 まずはその後のライブでオープニングを務めることが多い⑩「Running Away」。一定のリズムに、メンバーのコーラスもちりばめられたミディアム・ファンクになっている。
 そしてこちらもファンが多い⑪「Before I Let Go」[*3]。ベースの独特のリズムが目立つAメロと、高揚感のあるBメロの組み合わせ、最後の決めのタメなど、美味しいところがギュッと詰まっている。
 つづく⑫「We Need Love To Live」は、のような洗練されたスロウ。このベースラインは、とは全く違うタイプの楽曲である、2022年の現在大ヒットしている、リゾ(Lizzo)の「About Damn Time」という、雰囲気の全く違う楽曲と重なってしまうところが面白い[*4]。音楽はどこまでも数珠つなぎだと改めて感じた。
 最後を飾るのはと同様のスロウ⑬「Reason」。フランキーの優しさが詰め込まれたような、どことなく寂しげな、だからこそ日本人が好みそうなメロディーラインの1曲になっている。

-映像で楽しみたい-

上記内容は、基本的には音源(=映像なし)の情報で記してきたわけだが、この作品はやはり映像で楽しんで欲しいと思う。会場の雰囲気も伝わって、愛され続けるバンド、メイズを体感できる。
 このライブの際には、フランキーはまだ白い帽子ではなく、黒いメイズのロゴマーク入りの帽子をかぶっていたり(でも他は白い服)、バグの楽しそうなパーカッションとの掛け合い、ロアムの優しげな表情、そして楽しそうなオーディエンスと、冒頭にも記したが、“この場に居たい!”感がハンパなくあがってくる。これぞまさにライブ盤の醍醐味といえるだろう。

(2022.09.11)

[*1]もちろんだからといってスタジオ盤を否定するつもりは毛頭ない。ライブだけではなく、スタジオ盤でも着実に良作をだしてきたメイズだからいえる言葉だろうと思う。
[*2]もともとライブ盤が得意ではなかった筆者に、いやいやすごいな!と改心させられたのがこの作品である。その場にいけない人が、せめて体験できるものとして本当にありがたい存在である。
[*3]Spotifyでの再生回数が突出して高い。2022年9月現在の再生回数は、本作の「Joy And Pain」が約42万回に対して、800万回を誇る。
[*4]このリゾの楽曲は、あきらかに角松敏生さんが80年代中期に行っていたリズムである。角松さんの凄さと繋がる音を嬉しく感じてしまう。
[*5]本作の時点でのメンバーは以下のとおり。SAKURAの旦那様、フィリップ・ウーが参加したのは、本作から。
Frankie Beverly(Vo.G),Robin Duhe(B),Roame Lowry(Conga),Sam Porter(Key),Billy Friday Johnson(Dr),Ron Smith(G),McKinley Williams(Per),Phillip Woo(Syn)

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