-いわゆる無人島盤!-
メイズの作品は数あれど、どうしても1枚選ぶ必要があれば、筆者は迷わずこちらの作品を選ぶ。地元ロスに凱旋して行ったライブ盤は、いわばベスト盤も兼ねており、さらに新曲も入っているというたまらないパッケージになっている。
-スタートから攻められる-
『Live In New Orleans』と同様に、司会者!?のようなアナウンスから登場するフランキー。ファンキーなギターのリフから始まる②「Running Away」のイントロが流れると場内から悲鳴。爽快感溢れる③「Too Many Games」へ繋がるという黄金のコンビは、これから始まる序章に過ぎないわけだが、すでにここまでで充分に気持ちは高ぶる。
続くスロウの人気曲④「I Wanna Thank You」でクールダウン。キーボードだけのイントロが100秒という長尺になっているわけだが、それを待ちきれないファンのざわめきが嬉しい。対照的に短くまとめられた⑤「You」⑥「Happy Feelin's」の2曲は、短くすることがもったいないと思ってしまうのだが、あえてもっと聴かせてくれ!という気持ちを高揚させてくれる。
-さらに進化-
そしてここも『Live In New Orleans』同様、さらにBPMをあげたような⑦「Feel That You're Feelin'」が登場。筆者はこの作品からメイズを聴いたこともあり、スタジオ盤の同曲のゆったりさ加減に違和感を抱いたわけだが、このライブとの差は面白く、そこにライブの意義を感じることができる。
-ライブの最高峰に到達-
MCとミディアムの⑨「I Want To Feel Wanted」を挟んで、いよいよライブの最高峰へ到達。この⑩「We Are One」⑪「Joy And Pain」⑫「Before I Let Go」の並びには悶絶する。イントロから“Look At California”とつぶやくフランキーに地元愛を感じるミディアムの⑩は、フィリップ・ウー(Philip Woo)が居なくともきちんと再現されている。イントロからオーディエンスとフランキーのやりとり、最後はいつもどおり大合唱の⑪は、聴けば聴くほどライブで育て上げられてた楽曲だと実感できる。また、こちらもBPMを上げた⑫もベースラインがさらに際だってカッコよく、ラストを飾る⑬「Back In Stride」へのバトンパスまで完璧にキマっている。
-今回もライブの後にスタジオ録音の新曲-
ライブはここまでだが、スタジオ録音の新曲が4曲も収録されている。
初期のメイズのような⑭「Freedom(South Africa)」や、打ち込みの音と荒いギターが邂逅する⑮「I Wanna Be With You」、スティーヴィー(Stevie Wonder)の「かわいいアイシャ(Isn't She Lovely)」のオマージュと思ってしまう⑯「Dee's Song」らも良いが、白眉は⑰「When You Love Someone」[*1]である。洗練された音作りとなってきつつあったメイズの流れをさらに深めたような都会的な音作りでありながら、エヴァーグリーンのような永続的な楽曲になっている。
-ヒューマニズム-
全体を通して、今までのメイズの足跡をたどることができ、メイズの進化の様子をうかがうことができる。フランキーの声は、ライブだと多少荒くなるのだが、これがまた人間味が溢れて心に訴えてくるものがある。また、メイズの作品では何度も書いてしまうのだが、他のアーティストのライブ盤よりも、会場との一体感が伝わってくるのである。この理由は“メイズだから“に他ならないだろう。
(2022.10.07)
[*1]DVD盤には、この楽曲のプロモが収録されている。このライブが終わった後の楽屋というような設定からフランキーが歌い出し、メンバーがコーラスを重ねていくようなビデオになっている。
[*2]本作の時点でのメンバーは以下のとおり。サム・ポーターがオルガンで復帰している。
Frankie Beverly(Vo.G),Robin Duhe(B),Roame Lowry(Conga),Sam Porter(Key),Wayne Linsey(Key),McKinley Williams(Per)