-前作をさらに深めて-
おそらくメイズファンには一番愛されているであろう楽曲、「Joy And Pain」。それをタイトルに冠した4thである。前作から1年のインターバルで登場したわけだが、前作で見せた“洗練”をさらに掘り下げたといえるような佇まいになっている。
-代表曲-
まずは既出のとおり⑤「Joy And Pain」に触れられずにはいられない。“え!?打ち込み!?”と驚かされる音色から始まり、ベースがリフを繰り返しギターへパス...。おそらくメイズファンなら、歌い出しではなくてココから口ずさんでいることは間違いないだろう。そして満を持してフランキーの声が聞こえてくる。ここでのフランキーのヴォーカルは、エモーショナル度を抑えながらも、心には訴えてくる。そして詞は多くの聴衆に投げかけるような、普遍的な内容・・・“喜びと悲しみは、晴れと雨のようなもの・・・”。これだけ踊れるチューンなのに、なんてハートフルなんだろう。これはメイズだからハマる、まさに彼らの存在意義を呈した大切な楽曲である。
しかし、これだけの代表曲なのに、実はこのアルバム発表の時点ではシングルではなかったことが意外。次作である『Live In New Orleans』でライブ盤がカットされるのであった。さらに本作リリースから10年弱という期間を経た89年に、フロリダはタンパ出身のドナ・アレン(Donna Allen)によってカヴァ[*1]され、それがイギリスで大ヒット。UKチャートで10位を記録する。そしてそれを受けて本家スタジオ・バージョンである本作収録の音源がシングルカットされるという数奇な道をたどっている。
いずれにしてもサンプリングも含め、カヴァなどがなされ、多くのアフリカン・アメリカンの心を捉えている。
-シングルは2曲-
そんな名曲の代わりにシングルとなったのは、⑥「Southern Girl」であった。デビューからのメイズの色でアル“泥臭い”ファンクを見せる楽曲で、この雰囲気が大好きな昔からのファンは喜んだはずである。チャートもR&B9位を記録している。
また、②「The Look In Your Eyes」もシングルカットされている。こちらは、「Happy Feelin's」や「Lovely Inspiration」のような幸せ感のある陽だまりソングを、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の「Mercy Mercy Me」風味に、都会的にアレンジしたミディアム。こちらもR&B29位を記録しており、安定感のメイズを実証する。
-様々な愛のかたち-
その他の楽曲も同様に安定のメイズ印。②と同様な世界観のスロウは③「Family」と⑦「Happiness」。③の“We Are Happy・・・”のフレーズに家族の理想型を感じ、二人称の⑦においても“恋”ではなく、”愛“を説かれたような気持ちにさせてくれる。
また、冒頭の①「Changing Times」のイントロからギターが奏でるメロディラインであったり、インストの④「Roots」とメンバーにスポットライトを当てる手法は健在。ここにはメンバーへの愛を感じることができる。
-スタジオ作品最高峰か-
冒頭に記したとおり、前作からの洗練とデビュー当時の泥臭さを微妙にミックスさせ、違和感なく全体を仕上げた本作は、筆者もメイズのスタジオ作品でも(かなり迷うけど)最高峰に挙げたい。そしてその考えをさらに凌駕してくる強力なライブ盤が翌年リリースされることになる。
(2022.09.03)
[*1]イントロからアーバンな音色のSAXとニュージャック風なチャカポコ音を入れながらも、80年代中期の音作り・・・ニュージャックに移行しきれないような雰囲気。決して悪くないわけだが、時代を感じずにはいられない。
[*2]本作の時点でのメンバーは以下のとおり。前作と変更はなし。
Frankie Beverly(Vo.G),Robin Duhe(B),Roame Lowry(Conga),Sam Porter(Key),Billy Friday Johnson(Dr),Ron Smith(G),McKinley Williams(Per