-洗練された音-
メイズの作品群の中で人気のある3rdである。
これまでの2作では、フランキーの温かみのある歌声を核とした、少し泥臭いところを見せながら、聴いていてほっとする楽曲を届けてきた。今作でもその路線は当然のように変わらないのだが、“泥臭い”という部分では後退。“洗練された”という言葉がふさわしく、より聴きやすくなっていることが人気の理由に違いない。
-メイズらしさの溢れた2曲-
陽だまりソウルはもちろん継続。心が穏やかになるような①「Lovely Inspiration」は、メイズらしさ全開であり、前作から本作への橋渡しとでも言えるようなアレンジになっている。
続く②「Feel That You're Feelin'」は、ライブでもおなじみのミディアム・ファンク。ライブ盤[*1]を見ると、パーカッションのバグ(McKinley “Bug” Williams)が楽しそうに叩いている姿が印象深いわけだが、他のメンバーが演奏をそつなくこなしながらコーラスまで重ねていくというというところが匠の技。まさにメイズによるメイズのための楽曲と思ってしまう。
-ミディアムで示す大人の世界-
既出の“洗練された”というキーワードを思い出させてくれるのは、③「Call On Me」⑥「Woman Is A Wonder」⑦「Ain't It Strange」である。③は、メロディラインなどは、①のような王道路線なのだが、控えめなアレンジとささやくようなコーラスにより、少しだけ都会的エッセンスが詰め込まれている。⑥も同様のアレンジに、ワウギターを絡めたミディアム。イントロとサビへの意向を聞くと、まるでノーナ・リーヴス(Nona Reeves)。マイケル(michael jackson)好きの郷太さんがメイズからの影響がないはずも無いわけだが、改めて感じたところである。
その⑥から続く⑦もキーボードの音が目立つミディアム。この2曲のつなぎにパーカッションの“シャラララ~”という音[*2]が入ってつないでるわけで、この2曲の連続性を考えても、進化していくメイズを感じぜずにはいられない。
-名曲がみえてくる-
前作同様の雰囲気をもつ、フランキーが多少荒くうたう④「Timin'」[*3]は、次作収録の人気曲「Southern Girl」が透けて見える。“Just Keep On Pushin'”と歌う詞がいかにもメイズらしく、力強い。続く⑤「Welcome Home」はさらに攻めていて、これら2曲を推す方も多いのではないだろうか。
-また聴きたくなるという中毒性-
インストの⑧「Lovely Inspiration (Instrumental)」を配すことにより、よりアルバムとしての作品の質感を上げている。リスナーに“もう一度最初から聴こう!”と促しているコトや、アルバム全体が41分強という物足りなさが、何度も聞きたくなるという魔術をもっているのだろう。いずれにしても、メイズファンにも人気な作品と言うことに、大きくうなずいてしまうのであった。
(2022.08.27)
[*1]メイズはやはりライブ盤が一番なのだろう。ここでの印象は『Live In Los Angeles』の映像作品である。楽しそうにすることは、何事においても大切なことである。
[*2]このシャララ音は、①「Lovely Inspiration」から仕掛けられている訳だが、明らかにこの曲間の伏線である。
[*3]この曲のイントロ終盤のギターの決めを聴いたときに、久保田利伸ファンなら“おっ!”と思うはずである。「ふたりのオルケスタ」で聴いたあれ、そのものである。久保田さんは当然メイズのファンであるわけで、影響をうけるのは言うまでもない。
[*4]本作の時点でのメンバーは以下のとおり。
Frankie Beverly(Vo.G),Robin Duhe(B),Roame Lowry(Conga),Sam Porter(Key),Ahaguna G. Sun(Dr),Wayne "Wuaneg" Thomas(G),McKinley Williams(Per)