1. 『Can't Stop The Love』
  2. MAZE featuring FRANKIE BEVERLY
  3. artist
  4. privatesoulmusic
『Can't Stop The Love』(1985)1985
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Review

-キャピタルからの最終作-

デビューから配給していたキャピタル(Capital)からのリリースとして、スタジオ作としては最後となった6th。前作で要所をこなしていたフィリップ・ウー(Philip Woo)が抜け、ドラムのビリー・ジャクソン(Billy Friday Johnson)も脱退した後の作品ではあるものの、やはりメイズは動じない。いつも通りの音を進化させて届けてくれた。

-アップデート-

幕開けはメイズらしい明るいファンクの①「Back In Stride」。1stからのファンも納得するであろう多少の“イナタサ”を残したアップである。その系譜をアップデートさせていった雰囲気を持つのは④「Too Many Games」である。ライブでの人気のこの曲は、ファンクとは言えないのだろうが、いままでメイズが積み重ねてきた感覚を練り込んだ、昔ながらの作り込みに新しい味付けをしたような1曲である。一つひとつに切れがあるように、メリハリを楽しむことができる。ちなみにアルバムからの2枚目のシングルとしてR&B5位を記録している。

-都会的-

前作の雰囲気を継承しているのは②「Can't Stop The Love」が筆頭といえるだろう。いかにも80年代のようなはじけるギター[*1]が張り巡らされているのだが、決して耳障りになることはない。サビへの移行でその音がなくなるわけだが、この切替が比較的地味なサビを際立たせる。また、フィリップ・ウー譲りのシンセ音が都市という背景を浮かび上がらせ、より大人な音作りになっている。
 続く③「Reachin' Down Inside」は、メイズにしては珍しいどことなく湿度の高いスロウ。サビの最後のキメ“Inside…”の部分が印象的で、叙述的なフランキーの歌声に涙を感じる。とはいえ、前出の同様、極めて都会的な雰囲気で、こちらも前作の路線を踏襲しているといえる。
 シンセ音を駆使しているのはボーナストラック扱いの⑧「Twilight」。タイトルと音作りが時代を象徴しているようなこのインストゥルメンタルは、のシングルB面に収録されていた。

-存分にメイズワールド-

本作からの3rdシングルとなった⑤「I Want To Feel I'm Wanted」は、R&B28位を記録。スティービー(Stevie Wonder)の楽曲へのオマージュかと思いきや、フランキーが20年程前に書いた楽曲。恩師マーヴィン(Marvin Gaye)文脈で語られるフランキーだが、やはり本人の才能は相当なものである。
 続くへヴンリーな⑥「Magic」は、初めてフランキーがメンバーと書いた楽曲。メンバーのロビン(Robin Duhe)が名を連ねているのだが、メンバーにスポットを当てるフランキーらしい試みである。同様の優しいスロウは⑦「A Place In My Heart」まで続く。こちらはまさしくメイズらしい、サニーサイドな優しいメロディラインが印象的。タイトルも彼ららしく、また心が安らぐフランキーの声に、メンバーのコーラスを乗せるというこの上ないメイズワールドを展開している。彼らの1stアルバムの際に書かれている楽曲ということも大きくうなずける。

-継続=安心感-

前出のとおり、スタジオ録音盤は、本作でキャピタルを離れることになる。そのためしばらく次作のスタジオ作まで時間を空けることになる[*2]わけだが、その間も、きっちりライブ盤(配給はここまでがキャピタル)をリリース。この継続感も、リアルタイムのファンには安心させられたのだろうと想像できる。

(2022.10.02)

[*1]このギターは、ルーファス(Rufus)などで活躍したトニー・メイデン(Tony Maiden)によるもの。最初は、なんだかチープだなぁと思ったのだが、何度も聞くと、この音なしでは成り立たないことがよく分かる。
[*2]空ける、といってもレコード会社移籍を経ての4年間である。
[*3]本作でのメンバーは、以下のとおり。All Music Guideを参照。
Frankie Beverly(Vo.G),Robin Duhe(B),Roame Lowry(Conga),Sam Porter(Key),Wayne "Ziggy" Lindsay(Key),Wuaneg Thomas(G),McKinley Williams(Per)

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