1. 『Margi』
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『Margi』(1995)1995
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Review

-知らなかった…-

デビューシングルとなった⑬「Winnin' Ova You」が話題になっていた、“らしい”。“らしい”というのは、この事実を知らずにアルバムを聴いたからである。ゆえに、ヒップホップ・テイストのを聴いた時は、「あぁこういったテイストも挟んでいたんだ。時代の要請なんだろう。」という印象だった。逆説的にいえば、それだけ基本的なソウルアルバムだと感じたということだろう。それゆえ、現在でも1枚を通して充分聴くことができる作品である。マージ自身はパワフルに歌いこむほうではない。いや、力強く歌えそうなのだが、あえて抑えてるカンジとでも言おうか。とにかく丁寧な印象だ。

-3つのブロックが存在-

作品は3つのブロックがあると考えている。まず導入は誰もをひきつける楽曲を配置。イントロに続く②「Let Me Down Gently」はメロディラインが美しいミディアム。切なく、薄く敷き詰められたギターのリフに、これまた控えめアース(Earth,Wind&Fire)ラリー・ダン(Larry Dunn)が奏でるピアノが絡み合う。マージも丁寧に歌っていることから、お互いが出すぎずに大きな力を生み出した楽曲となっている。続く③「How I Miss You」は歌いだしからマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)「What's Goin' On」使い。詞のなかにも「Marcy,Marcy,Me」や「Father,Father」などが登場し、古いソウルへの憧れを描いている。ここで印象的なベースを奏でているのはダグ・ウィンブシュ(Doug Wimbish)。ヒップホップ畑で成長した黒人ベーシストらしいウタゴコロのある弾き方がカッコイイ。

-彼女がやりたいことは、このエリアではないだろうか-

この2曲に続くここからが2つ目のエリア。この部分が彼女のやりたい世界なのではないだろうか。いわゆるブラックコンテンポラリー的な世界が拡がる。ナーバス系のスロウ④「Don't Turn Your Back On Me」 、タイトルそのままのインスト⑤「Rain Forest」に埋め込まれたウェット感をそのまま引き継ぐ⑥「Don't Take Your Love Away」。これまた湿度の高いスロウだ。音作りは決して新しくない⑦「I'm So Glad」もアーバンなスロウ。ニュージャック後期の音作りにSAXの音色を交えることにより、都会の空気感を流入している。起伏の少ない⑨「Wherever You Are」は、ささやくようなマージの声(特に高音域)とアコースティックギターの音色が切なさを演出するスロウである。

-ここは商業的!?-

そして最後のブロックはへの布石とも言えそうなアップサイド。⑩「I Need」は、メアリー・J・ブライジ(Mary J.Blige)の「All That I Can Say」的とも言えるピースフルな楽曲だ。イントロのエレキギターで若干ロックよりな部分を演出する⑪「Searchin'」でいよいよボトムアップ。そしてへと繋がる。盛り上がりは最高潮となる。

-古いソウルへの憧れ-

しかし、ここで締めにルーファス(Rufus)のカヴァー⑭「Everlasting Love」。マージ自身がいかに古いソウルに造詣が深かったかがわかる。この曲を選ぶところがにくいところだ。の直後にを持ってくることで、「ヒップホップソウルもいいけど、私はソウル・クラシックスが好きなの。」とでも言っているようだ。

-1枚を通して聴いてほしい-

1枚を通して聴くと、ヒップホップ・ソウル方面のヒトではないことがわかるだろう。そしてそれを伝えたかった彼女の作り方も理解できるだろう。結局このヒトもこのアルバム1枚を残して消息不明。ほぼ全ての楽曲をマージ自身が手がけていたことから、まだまだやれそうな気がしていたのだが…。

(2011.02.27)

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