1. 『Love On My Mind』
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『Love On My Mind』(1995)1995
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Review

-マッチョなジャケット-

R&Bという意味では、ハードコアな印象の深い、ルーク・レコード(Luke Records)H-タウン(H-Town)U-マインド(U-Mynd)と、マッチョなお兄さんたちがアダルトな世界を展開するという、日本人にはまねできそうもない濃い音とディープな歌が身上といえるだろう。
 そこにフロリダが地元ということもあり、レコード会社が揉めていて、なかなか新作を出せなかったロレンゾが入ってきた。ジャケットを見ると、ムキムキな体に上半身は裸…。うーん、合わせてきてるなぁと(良い意味で)ニヤニヤしてしまった。

-『Juicy2』から-

このロレンゾに関しては、筆者はこの作品が入り口だった。それもリアルタイムではなく、R&Bファンにはバイブルと言える印南敦史さんの『Juicy2』[*1]を読んでからである。この書籍には“おせっかいマーク”(ご本人がそのように書いていらっしゃいます)として、1曲ごとにアイコンが示してあり、例えばコーヒーカップのマークがついていれば、ミディアム~スロウという目安を示している。当時、とにかくスロウをむさぼっていた時期に、このコーヒーカップマークがダダ並びしているこの作品を探したのを覚えている。

-金太郎飴はお好き?-

そんな作品は、当然スロウのオンパレード。よく言う“金太郎飴的な”、どこを切り取っても同じ味になっている。この比喩は、良い意味でも悪い意味でも良く使われる訳だが、本作はまさしくこの言葉が当てはまるほど、同じ論法になっている。これを“波がない”“どれを聴いても同じに聞こえる”などと言われる方もいらっしゃるだろうが、逆をいえばそれだけ安定しているということになる。⑦「Just Wanna Touch Ya」を除き、全てが連鎖しているように思う。

-キースの作品もしっかりと溶け込む-

止まってしまうんではないかと思うほど下がったBPMを背景にした①「Love On My Mind」から始まる。イントロとして数十秒こういった楽曲を入れることは、他のアーティストの作品でも見られるが、きちんと1曲目としてこんなスロウを持ってくるというアルバムは珍しい。これがこの作品の入り口であることを宣言するかのようなねっとりスロウであり、テーマのような楽曲になっている。ルーク(Luther R.Campbell)もフィーチャーされているわけだが、全く目立つことなく、ロレンゾを中心に考えてくれている。ここには大きく賛辞を送りたい。
 最低限の音とボーカル、ささやくような女性のコーラスと、肉感の強いスロウの②「You Ain't Had No Lovin」に続くのは、キース・スウェット(Keith Sweat)がプロデュースした③「If It's Alright With You」である。そもそもこの作品のリリース前には、キースが全面的プロデュースをするいうアナウンスが流れていた。しかし、レコード会社移籍問題もあり、結局表に出てきたのはこの1曲だけとなってしまったようだ。楽曲は、キースもコーラスに入り、本人の作品同様エリック・マッケイン(Eric McCain ex:Entouch)と共作したという力の入れようで、当然のキース印の出来。ニュージャックスウィングスロウの完成形のような仕上がりになっている。
 続く④「Shining Star」も、タイトルこそクワイエットだが、世界観は変わらず。女性のコーラスから始まる⑤「Don't Wanna Share」が多少メロディアスになったといえるだろうか。このコーラスは、前94年にアルバムデビューしているレーベルメイトのトレリーニ(Trellini)によるもの。ロレンゾを邪魔しないように控えめではあるが、きれいなコーラスはキキドコロと言える。続くニュージャックスロウ感の強い⑥「Bout To Lose My Mind」まで、まるで組曲かのように進んでいき、統一感を覚える…。

-遅れてきた…という感じ-

しかし、ラガ感が半端ないが急に登場して慌ててしまった...。なんでこんなのを...。これ以上はいいたくないが、せめてボーナストラック的な入れ方にできなかったのだろうか...。
 続く⑧「Wanna Do Ya」で持ち直す。今までの①~⑥とは多少違うミディアムでありながらも、のように雰囲気を壊さないところが嬉しい。
 そして最後の⑨「Betcha He Don't」は、完全に世界観を取り戻す。メロディラインはのようで、最初は詞を変えただけ??とも思ってしまった。しかし、それだけに安心印のスロウであるとも言えるわけである。
 1995年リリースとはいえ、その佇まいは92~93年といったところ。成熟したニュージャックという意味では、決して2ndと異なる作風というわけでもないと言える。

-目立たぬ制作陣だが-

そんな音作りをした制作陣は、以外、ロレンゾ本人とウォンデル“リック”スミス(Wendell “Rick” Smith)ジョセフ・トーレンス(Joseph Torrence)の3人である。これだけの作品をつくりながらも、彼らが全面的に手がけたのは、レーベルメイトであるU-マインドの2nd『Funky,Sexual,Freaky & On The Real』だけである。確かに売り上げが期待できる作りでは無いかもしれないが、もっと活躍出来る力量を持っていたに違いない。H-タウンとともに復活などという構図があっても良さそうなものだが…。

(2022.04.15)

[*1]説明不要かもしれないが、この書籍は、本当に何度も読み返したディスクガイド。特に90年代にスポットを当てた“2”は、掲載しているもの全てを集めたくなる衝動に駆られた。

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