-2年のインターバル-
直訳すると『合法的にあなたのもの』。もちろんLe Jitの綴りが入った単語から選ばれた物であることは明白なわけだが、男気溢れる彼ららしいタイトルとなった2ndである。インディではあるものの、濃厚な1stから2年というインターバルでリリースされたことは、ヴォーカルグループ不遇の時代背景において、とても喜ばしいことである。
1stは話題となり、そして希少価値となるも、リイシューがあったりと、手に入りやすくなっているわけだが、この2ndはその動きが無く、相変わらず手に入りづらい作品になっている。だからといって内容が悪いわけでは無く、ここでも力強い彼ららしさを感じることができる力作である。
-自分たちの力で、自分たちを表現-
今回も有名なプロデューサーやゲストを招くこと無く、ほぼレ・ジット周辺の人物で作られている。しかしそれがマイナスという意味では無く、彼らの世界をやりたいように表現できているという、インディに身を置く意義を感じる。途中に入るラップはどうなの?という部分はあるが、そんなことを忘れさせてくれるウタヂカラがココには存在している。
シングルとなった①「Skintone」は、まさしく1stからの延長線上にある楽曲で、ベース音に支配されるかのようなダークな顔色をもつミディアム・スロウに、語りとラップが絡みつく。曲のタイトル「Skintone=肌の色」という楽曲をシングルにもってきているところが、アフリカン・アメリカンのプライドの誇示といえるのではないだろうか。そんな自信溢れる楽曲は続いていく。
彼らにしてはかわいらしいポップな②「3 Ladies」は、後半のリードをクリスが歌い、得意のファルセットを大きく披露。それに絡むロイのバリトンを聴くと、どうして兄弟なのにこんなに声色がことなるんだろうと考えてしまうわけだが、このギャップが彼らの魅力といえるだろう。
緊張感でヒリヒリしそうなビートにラップを大きくフィーチャーした③「Much Love」は、1stからの延長と言えそうな、もう一つの彼らの顔。あまりラップが多いと少し苦手な筆者だが、これは純粋にカッコイイと感じることができた。
-魅力が詰まったスロウ-
先ほどと重複するが、彼らの魅力として挙げられるものに、ロイのバリトンとクリスのファルセット、それらを溶け込ますテナーのジョンという、それぞれの声を活かすところがある。それはやはりスロウに集約される。今回もそこに力を入れていることは⑩「Silky Sheets」を1stから再掲しているところに表れている。
音数が少ないことでロイのバリトンを楽しめる④「Play By The Rules」は浮遊感たっぷりのねっとり系。対してアコースティックギターの音色とクリスのファルセットで迫る正統派の⑤「My Baby Love」と、どちらもそれぞれを壊すことなく作品に溶け込んでいる。
また、上記2曲の間をいくようなミディアム⑧「Want To Hold U」、トリッキーなリズムにトークボックスのコーラスが絡む⑨「Can I Get That Wicha」、そしてタイトルからアイズレーズ(The Isley Brothers)趣味まるだし[*1]の上記⑩へと続く。このラインナップは熱血漢好きにとってはたまらないはずである。
そして最後の⑭「Inspiration」は、ゴスペルに経緯を表してというところだろうか。サビから入る女声コーラスとのハーモニー、けっして邪魔しないサックスの音色など、きれいにまとめられている。
-拝啓、レジェンドの皆様-
経緯を表しているといえば、レジェンドたちからの影響も隠すこと無くアウトプット。上記のアイズレーズに加え、もともと彼らがフェイバリットとしてあげている[*2]メイズ(Maze featuring Frankie Beverly)への憧憬である。
⑫「In My Heart」は明らかに、メイズの「Before I Let Go」のベースラインに、“パーパッパッパ”というコーラスまで借用。また、⑬「It's All Good」はイントロから「Joy And Pain」しているわけで、クレジットはないながら、オマージュでとどめて良いのか悩んでしまうレベルである。いずれにしても、彼らの“メイズ愛”を感じずには入られない2曲である。
-再プレスを願って-
1stはディクスユニオンの尽力により、2016年に再々プレスされたことから、お宝盤ではなくなった。この2ndも同様に実現されることを願いたい。
(2022.05.21)
[*1]タイトルは「Between The Sheets」から、イントロのギターは「Summer Breeze」から。「Summer Breeze」は、BC(ex:ⅣXample)の『Candyman~Love Letter』に収録の「Where Is The Love」と同じくらい、クレジットは無いけど大丈夫!?と言いたくなるものである。
[*2]HMVのインタビュー(2013.06.03)参照。