1. 『Tracks Of Life』
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『Tracks Of Life』(1992)1992
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Review

-再び合流した兄弟たち-

ロナルドのソロプロジェクトのようになってしまっていた本家アイズレーズに、2人が戻った。ベースのマーヴィン(Marvin Isley)にギターのアーニー(Ernie Isley)アイズレー・ジャスパー・アイズレー(Isley Jasper Isley)からの出戻りになるわけだが、ロナルドにとってなにより心強い2人の合流だっただろう。[*1]

-4人目のメンバー-

リユニオン盤とはいえ、プロデュースは前々作からと同様アンジェラ・ウィンブッシュ(Angela Winbush)。プロデュース3作目となる本作だが、デュエット曲が無いにもかかわらず、一番彼女が躍動しているように感じる。ほぼ全曲を作曲で参加している。
 「彼女はアイズレーズの熱烈なファンだったので、いわゆるアイズレーズ調の曲を書くことができた」(ライナーノートより)
 というロナルドの言葉そのままに、全編に彼女の才能があふれ出している。

-打ち込みは全体的に古いものの-

時代的に仕方が無いといわざるを得ない①「Get My Licks In」②「No Axe To Grind」の後からの楽曲群は、まさしくアンジェラ印そのもの。スロウファンクの③「Searching For A Miracle」は、「Footsteps In The Dark」のようなベースラインに彼女らしい打ち込みがはまる。ロナルドのファルセットが前提に書かれているような④「Sensitive Lover」リオン・ウェア(Leon Ware)が関与した[*2]⑤「Bedroom Eyes」のセクシー路線、マクファーデン&ホワイトヘッド(McFadden & Whitehead)ジーン・マクファーデン(Gene McFadden)と共作しているミディアムの⑥「Lost In Your Love」と、まったく非の打ち所がない。

-私、アップもいけるんです!-

その流れのままに、アップの⑦「Whatever Turns You On」へ。このリズム感と印象的な鍵盤・・・。打ち込み音が古いともいえるかもしれないが、それはそれで味。最後が急にスパッと終わるのが、最初はなじめなかったが、なれるとこれがカッコイイ。この楽曲はベースが目立つので、マーヴィンを前面に押し出したものかと思いきや、ここではセコウ・バンチ(Sekou Bunch)[*3]が弾いている。ちなみにセコウは⑪「Koolin' Out」も手がけているが、さすがに長年アイズレーズとツアーしてきただけあって、こちらも雰囲気をしっかり捉えている。
 90年にアンジェラが手がけていた女性トリオ、ボディ(Body)が「In The Morning」として歌っていたもののカヴァとなる⑧「Morning Love」は原曲よりもBPMをあげて、より跳ねている。多少のニュージャック感を入れているのも時流かとも思う。
 これも打ち込み音が古いのだが、ポップな⑨「Dedicate This Song」も面白い。かなり爽やかに舵を切っている。最後にアーニーのギターが入ってくるのだが、まさしくアーニー得意のロングトーンなソロが聴ける。リユニオンしたからには、これが入っていないと!と思わせてくれた。
 さらにアンジェラとロナルドの愛があふれた⑩「Red Hot」も力強い。まるで二人でいることが楽しくて仕方ないという気持ちがあふれているかのように躍動的である。

-おなじみ、カヴァは・・・-

前出ので文字通りクール・アウトしたあとは、カヴァシリーズの⑫「Brazilian Wedding Song(Setembro)」。このトラックはクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)が、89年のアルバム『Back On The Block』で披露した[*4]インスト作品にアンジェラが歌詞をつけたもの。ロナルド自身もスペシャル・サンクスでクインシーに対して「歌詞をつけることを許してくれてありがとう!夢が叶った!」と書いているのだが、それほどこの楽曲が気に入っていたのだろう。[*5]
 最後はアーニーが作曲に関与した2曲。メロディアスなファンク⑬「I'll Be There 4 U」と、アーニーのギターがむせび泣くファンク⑭「Turn On The Demon」なのだが、個人的にはで終わりでも良かった気もする。

-存在意義-

アンジェラによる全プロデュース作は本作で終わってしまった。その後いろんなアーティストがアイズレーズの楽曲を提供し、もちろんそれぞれ素晴らしいのだが、相性という意味ではアンジェラ以上の存在はないだろう。この作品を聴くと改めてそう感じのである。

(2021.03.14)

[*1]ライナーノートを執筆した松尾KCさんによると、90年の日本公演の際にすでにマーヴィンは同行していたとのこと。
[*2]アイズレーズもレジェンドだから当然なのだろうが、さらっとリオン・ウェア(Leon Ware)が参加(ドラム、プログラミング)しているところがすごい。
[*3]ジャズ・ベーシストで、自身もソロ作を2つリリースしているセコウは、11年間もアイズレーズのバンマスを担当していた。長い付き合いになればやはりそのバンドの色を熟知しているのだろう。
[*4]言うまでもないが、この1曲のための参加メンバーがすごすぎる。TAKE6のコーラスは有名だが、TOTOの面々、ジェラルド・アルブライト(Gerald Albright)、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、ジョージ・デューク(George Duke)などなど。
[*5]気に入ったというのもあるだろうが、タイトルからアンジェラとの関係の昇華がこのカヴァを決めたのではないかと下世話に思っている。

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