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『Masters Of Time』(1996)1996

Review

-安心して聴き進められるのですが-

アルバムとして統一された作りは大好きだ。なんといっても安心してその雰囲気のまま長い時間を楽しめる。この作品はそんな楽しみ方をするのかもしれないのだが、とにかく酷似した楽曲が並ぶ。

-メンバー以外が大きくサポート-

そんな作品に力を貸したのはアヴァーント(Myron Avant)。コンポーザーとして7曲提供している。他にもプロデュースのブルース・スミス(Bruce Smith)[*1]を筆頭に、アントニー・ウィリアムス(Antoine Williams)[*2]デビー・キング(Debbie King)アルフォンソ・ウォーカー(Alfonse Walker)[*3]の名前が並ぶ。メンバーが参加した楽曲は⑥「Missing You」にとどまっていることから、歌うことに徹したといえるのだろう。とはいえ、分厚く、熱く歌い倒すことはせず、爽やかにコーラスを重ねている。

-オハイオの匂い-

出だしからアヴァントの提供曲が並ぶ。①「Smooth It Out」からまで[*4]は、全て彼のペンによる。③「Sorry」のイントロの電話で始まり、男性が謝るところなんて、彼らしさが凝縮されていて、優男のイメージをここでも披露している。また、メンバーと共作のは同郷のメン・アット・ラージ(Men At Large)の「So Alone」風で、ルネッサンス(Renaizzance)が歌いそうな、レヴァート(Levert)匂も濃いオハイオスロウである。ちなみにアルバムはオハイオ州のダート・スタジオ(D'art Studio)で録音されている。

-吠える漢(オトコ)を希望-

レヴァート絡みでいえば、レヴァート作品でギターを担当しているロバート・カニンガム(Robert C.CunninghamⅢ)がアントニー・ウィリアムスと共作で⑦「Faithful」⑧「Why Should I Kick It」を提供。ミディアムのは、スロウ中心の作品の中ではある程度リズムを感じ取れるフック的役割を果たしている。筆者的にはこの楽曲で力強く吠えてくれる存在が入ればさらに印象は変わったのではと思ってしまった。

-シングルはこの曲だった-

アヴァーント作の優等生スロウ⑩「The Love That I Have」の後は、シングルとしてリリースされた⑪「I'll Do」とそのカップリングだった⑫「We Can Do This」。2曲ともデビー・キングが作曲し、アルフォンソ・ウォーカーがプロデュースしている。どちらもスロウだが、はヒップホップ要素をほんのうっすらと塗っている程度、変化をつけている。

-石島さんからの言葉に共感する-

それにしても似ている曲が多い。BMR誌[*5]で石島春美さんが、押し並べて似たような曲ばかりなのも惜しい気がする。(中略)呆れるほどの歌バカに徹するとか、インディだからこそできる何かを打ち出して欲しかった。と記述されているが、まさしくその通りである。個人差はあるだろうが、もう少し温度の高い、秀でたヴォーカリストがいたとしたら…と考えてしまった。

(2021.03.27)

[*1]All Music Guideによると、ジェフ・ローバー・フュージョン(Jeff Lorber Fusion)でドラムやパーカションを担当している方となっているが、同姓同名?という気がしてならない。
[*2]ストロング(Strong)というスリック(Slick)が大いに関与したバブルガムソウルの5人組の作品にも作曲者としてのクレジットがある。
[*3]代表作はキース・スウェット(Keith Sweat)と共作した「Chocolate Girl」。名作『Keith Sweat』に収録。
[*4]④はK.ターナー(K.Turner)、⑥はメンバーのゴードンとパールとの共作。
[*5]『black music review』1997.2(No.222)所収。

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