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『2nite』(2005)2005
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Review

-ロナルドの声とは違う-

冷静に考えればわかることだが、親戚のおじさんと声がそっくり、なんていうことはそんなにあるわけではない。ただ、生い立ちを聞いて、「やはりファルセットで歌い倒すのか!?」と過度の期待をしてしまったのは筆者だけだろうか。当然だがロナルドの声とは異なる。しかし、これが悪いわけでは無く、異なる質の優しさを伝えてくれるものであった。
 出自を鑑みると、アイズレー人脈をフルに活用した布陣で来るのかと思いきや、地元のアーティストと組んで、しかもインディからのリリース。このあたりが応援したくなる[*1]ポイントである。

-オハイオインディ界の雄、マイロン-

アルバムのプロデュースはオハイオ陣営で固められており、それだけで安心できる。そのような中でも彼の声質と相性が良かったのは、マイロン(Myron)だろう。自身の楽曲と同名異曲の②「Free」は、バージョン違いの⑨「Your Lovin' Makes Me Free」も含めて、マイロンらしさをフルに発揮。ジャジーでありながら、浮遊感のある、かつ、どこか湿度が高い楽曲。良い意味での“あやしさ”が、悪い意味での怪しさを超えないという微妙なラインは、彼の得意とするところである。
 また、アイズレーズ(The Isley Brothers)の「You're The Key To My Heart~You're Beside Me(Part1&2)」 の世界観のようなイントロを持ったきた③「Again(Like the first time)」も彼の生い立ちを考えてのもの。ここにKロブのコーラス、“ラーララー”をのせるというつくりはもはや確信犯だろう。
 ベースの重たい音が緊張感を生む⑩「Everyday」は、Kロブの声の爽やかさとは背を向いている訳だが、意外にもしっくりとはまる。地味ながらも、ソウルフレイヴァーが伝わってくる。

-他のプロデューサーも秀逸-

他のプロデューサーだった負けてはいない。まずはイギリスで話題となった①「2nite」アンジェロ・レイ(Angelo “lo” Ray)Ⅲ・フラム・ザ・ソウル(Ⅲ Frum Tha Soul)らで腕を振るった雰囲気とは異なるミディアム・ダンサーである。オリジナルである⑪「2nite(Original)」のアレンジと甲乙つけがたい[*2]ほど、どちらもかっこよく仕上げている。小節ごとに、スタッカートが聴いたようにスパッと切っていく感じが魅力的。また、ピアノやパーカッションの使い方が印象的。レイにこういったメリハリのある、きちっと整ったアップを作るイメージが無かったので、より新鮮に聞こえた。
 逆にアンジェロっぽい、重たい漆黒のスロウは⑧「Stay」。イントロに“ウェルウェルウェール”と歌わせているのもご愛敬というところだろう。

Kロブのお兄さんであるキース・ロバートソン(Keith Robertson)[*3]④「Everybody's Talkin'」⑥「Mamita」で参加。黒っぽく無いメロディをソウルにしているところもアイズレーを意識してなのかと思ってしまうわかりやすいメロディ。ただ、はちょっとアルバムには合わないかなぁと…。
 一番セクシーな曲は、こちらもオハイオインディ界で活躍のウィ(Oui)による⑦「Slow 'N Sexy」。きちんとリズムがありながらもしっかりとエロいという、筆者のど真ん中の楽曲を届けてくれた。

それにしてもオハイオの人材はすごい。伝統的なものなのだろうが、多くのアーティストの個々のレベルが高い場所は他にないだろう。

-ビジネスという側面で見ると-

これだけの充実作でありながらも、これだけの血筋でありながらも、実力がありながらもアルバムのリリースはこの1作のみ。ビジネスとして厳しいことを改めて思わされてしまう。

(2021.09.11)

[*1]とはいえ、アイズレー人脈でリリースしてても応援するに決まっているし、それはそれで興味津々!クリス・ジャスパー(Chris Jasper)プロデュースで、アーニー(Irnie Isley)のギターがなくことを希望します!!
[*2]2曲のミックス違いがある場合、概ねはっきりとどちらかが好き!と断言できるが、この曲については悩ましいところ。ジャネット・ジャクソン(Janet Jackson)の「Any Time Any Place」のジャム&ルイス(Jimmy Jam &Terry Lewis)かR.ケリー(R.Kelly)かを思い出した。
[*3]テディ・ペンダーグラス(Teddy Pendergrass)やキャロウェイ(Calloway)らの作品で楽曲を提供していた。やはりお兄さんも音楽に携わって、結果を残しているところがすごい。

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