1. 『Make It Last Forever』
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『Make It Last Foerver』(1987)1987
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Review

-ニュージャックスウィングの誕生-

個人的に話でしかないのだが、この作品がリリースされたのは、筆者が小学校5年生のころ。野球少年に洋楽を聴くという趣味もなく、当然ながらこの衝撃をリアルタイムで味わった訳ではない。ニュージャックスウィングの誕生を目の当たりにした方々には、それは大きなインパクトだっただろうと、文献などを頼りにするわけではなく、この音でそう感じさせてくれる記念碑的な作品である。④「I Want Her」の“ドンドンパンっ”の衝撃をその当時に感じたかったと思って仕方がない。シングルだった同曲は、R&Bチャートを制し、21週間もチャートに残ったというから恐ろしい。

-筆者的な衝撃は-

とはいえ、時を経てから聴いた筆者が最も衝撃を受けたのは、⑤「Make It Last Forever」である。説明不要の名作であるが、当時無名のキースとジャッキー(Jacci McGhee)がデュエットしたこの曲。80年代中期のブラコン的なマイルド感(白人に寄せた感)とヒップホップ世代のスネアが見事に融合し、30年以上たった今でも色あせていないということが奇跡である。この楽曲の影響を受けたというのは、現在活躍するR&Bアーティスト全員といえるのではないだろうか。この曲を初めて聴いたときの衝撃は、リアルタイムであろうが、後発であろうが変わらなかったのではないだろうか。

また、の陰に隠れがちではあるものの、②「Right And A Wrong Way」の淫靡な粘着系スロウも見事。その後続くキースのベッドルーム・ソングの近似値は、よりもむしろこのにあるといえるのではないだろうか。歌い出しの不安定さ(これは羊先生の持ち味)を楽曲のもつエロさが凌駕してしまうというスタイルは、ここから始まったのである。

この世界観をドラマティックス(The Dramatics)のカヴァーである⑥「In The Rain」にも応用。見事に密室的閉塞感を作り上げ、キース色に大きく塗り替えている。

-その他の楽曲も秀逸-

録音時にはキースが完璧主義者で、16~17曲録音をしたのに8曲しか収録しなかったというエピソードが残っているくらいだから、当たり前と言えば当たり前なのだが、他のどの楽曲の出来も秀逸。

システム(The System)がやってそうなシンセファンクにニュージャックをブレンドした①「Something Just Ain't Right」③「Tell Me It's Me You Want」は、技術的にそんなに新しいことはやっていないのだが、これにニュージャックのハネをのせているところが新鮮だったのだろう。明らかにそれまでの時流の音と違うことが理解できるはずである。このあたりがテディ(Teddy Riley)の魔法なのだろうか。

また、一番ニュージャック的なリズムがわかりやすい⑧「Don't Stop Your Love」は3rdシングル。パーカッションのスココン音がたまらない。 同様にスロウの⑦「How Deep Is Your Love」にもやはりそのスココン音が![*1] もはや欠かせない音である。

-当サイトの基礎-

このWebサイトを始めた際に、どこまで年代を遡ろうかと考えた。筆者自身のルーツはニュージャックスウィングにあるという結論にいたり、1987年を起点とした。筆者の定礎は、この作品ということになるだろう。

(2021.04.26)

[*1]当然、他の楽曲でも使われている“ニュージャックスウィングならではのあの音”のことである。

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