-憧れの三拍子-
ソウルを歌えて、サックスも吹け、キーボードも操る…。筆者が憧れるすべてを一人でこなすブルー・アイド・ソウルマンである。ブルー・アイド・ソウルとはいえ、やっていることはジャンル分けに使うそれとは別。“黒人かと思った”ということはなかったが、もっとソウル寄り...ソウルよりもややジャズ寄りとでも表現しようか。いち早くUKで認知されたことに大きくうなずいてしまうというような、おしゃれなスタイルが信条だろう。
そんな彼の作品が伝来したのはこの2ndからである。
-アルバム全体でレヴェルをあげる-
この作品には4番バッターはいない。秀でた1曲があるわけではない。しかし、それぞれの楽曲のレベルが高く、作品全体を強固なものにしている。全体的にまとまっていて、組曲のように感じることができ、作品全体の尺である40分を一気に、アルバムとして聴くべきだろう。
-ブラスの音色-
アルバムのタイトル曲である①「Celebration」は、UKソウルとステッパーの融合。間奏にはプレイヤーらしくサックスの音色を盛る。このような音作りが彼の真骨頂なのだろう。
つづく②「Old School Party」も間奏にあたたかいブラス・セクション。UKソウルの王道のような音作りの③「I Just Wanna Dance」にもブラスのブリッジと、同じような作り込みでありながらも微妙にずらして飽きさせない。他の楽曲も、間奏のカッコ良さはピカイチで、このあたりには日本でも受け入れられる生真面目さを感じる。
-全曲文句なし-
他にもBメロからのチャカポコギターの④「I Like The Way」、クラップと歌詞で幸せ感を高揚させる⑤「Summertime」、間奏のジャズ・サックスが印象的な⑥「You're All I Ever Wanted」、シングル候補と言われてもおかしくないキャッチーなミディアム⑨「One Ya Want」と一切捨て曲なし。そのなかで印象的だったのはスロウの⑧「Love U Down」。まるでマックスウェル(Maxwell)の2ndのような重たいクールな雰囲気で、間奏の音数の少ない空間から単調なギターのソロを入れているところがたまらない。ステゥアート・マシューマン(Stuart Matthewman)[*1]のプロデュースとウソを言われてもうなずいてしまいそうである。
-もっと伸びしろがあるのでは-
欲を言えば、ということになるのだが、彼の実力ならもっといろいろなことができそうな気がする。カナダ版のシャーデー(Sade)になれる...つまりシャーデー・アデュ(Sade Adu)のようなカリスマ性をもつヴォーカリストとの邂逅を果たせば、もっともっと面白くなるような気がする。
(2021.08.13)