-トレヴェル・ファミリー-
時はR.ケリー(R.Kelly)の世。トレヴェルの一員だったルード・ボーイズ(Rude Boys)のリードだったJ.リトル(J.Little)がソロを出すとなれば、当然その実力派集団が取り囲む。さてどのような内容かと思っていたが、紐解けばやはりリヴァート(Levert)家の匂いが充満している。
-様々な色を出したかったと思える本人プロデュース-
大きく分けると、本人、ジェラルド&ニコラス(Gerald Levert & Edwin Nicholas)、マーク・ゴードン(Mark Gordon)の3組のプロデュースで構成されている。3組と言っても、全てリヴァート・ファミリーなのはご愛嬌。
まず冒頭の①「Puttin' It Down」から時流の音とリヴァート・ファンクを融合させたようなミディアムを制作したのはJ.リトル本人とエドワード・バンクス(Edward Banks)、シーン・シングルトン(Sean Singleton)によるもの。デトロイト、アトランタ、ニューヨークなどと都市名を連呼するあたりで一番聴こえてくるのはクリーヴランドとシカゴ。狙っているとしか思えないのだが、逆に潔いといえるのかもしれない。
アーバンを意識した⑧「Make Me Know It」はサックスが鳴きまくり、都会の虚しさを感じられるミディアムである。うまくジャズ感を出しているような気がする。もう1曲ある⑩「I'm A Playa」はヒップホップなのだが、“色々な楽曲ができますぜ”的アピールがしたかったのだろう。しかし、この曲は蛇足。正直あまり聴かない。
-安心のジェラルド&ニコラス印-
アルバムの半分を手がけているのは、ご存知ジェラルド&ニコラス。②「Break U Off」は完全にリヴァート色。これはリヴァート用に書かれたんじゃないかなという気がするくらい、一聴しただけでジェラルドとエドウィンの共作だとはっきり分かる温かいミディアム・スロウだ。
シングルとなったのは③「Me And You」と④「The Hump Is On」。③はR.ケリーを意識したようなスロウ。ブリッジ部分の息の抜き方がたまらなくカッコイイ。ここまでのウェットな雰囲気を少し乾かしたような、落ち着ける場所が用意されたような雰囲気だ。続く④はアンジェラ・ウィンブッシュ(Angela Winbush)が得意そうなベースの効いたリズム感をもったスロウ。轟くベース音にJ.リトルがレスポンスする。シングルだったこの2曲であるが、④がR&Bチャート92位とあまり振るわなかったのが意外である。
ジェラルドが歌いだしそうな⑥「You're Gonna Miss Me」は抑え気味なパーカッションが印象深いスロウ。ところどころに入り込むギターも切ない。三連系スロウ⑦「The Way We Used To Roll」でいよいよ深夜へ突入。モノローグ(語り部分)がエロ度数を上げている。
-いぶし銀のマーク・ゴードン-
⑤「Flex & Sex」⑨「I Gotta Have It」はマーク・ゴードン。何度聴いても“say yes say yes…”の部分が“千円…”に聴こえてしまう⑤も悪くないのだが、必聴は⑨。時間がゆっくりあるときに聴きたい名スロウだ。これをベストに挙げる方は多いことだろう。
-現在はカフェを経営-
1994年のアルバム選となったときに、よく名前が挙がるこの作品。「R.ケリー色を感じる」という意見が多いようだ。もちろんそれも分かるのだが、基本はリヴァート色のほうが濃いだろう。これ1作のみというのが、ジェラルド亡き今、本当に悔しいくてたまらない。
(2011.05.14)