1. 『It's Time』
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『It's Time』(1998)1998
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Review

-ジャケ買い-

グレン・ジョーンズの作品だから購入した。しかし、これが無名の新人だったとしても、このジャケットなら買ってしまったに違いない。裏面も含めて、ジャケ買いする時の“当たる”基準にピッタリと当てはまる。(買うときには見ることはできないが)中面も工夫されている。同じ構図の写真を2枚使用し、表情のみを変えてみせ…(巧く伝えたれなくてすみません…。)、そこが面白い。しかもグレンの写真はほぼ笑顔で、ほっこりさせられる。

-憂慮した方向へ進むことはなかった!-

もちろんジャケットだけではない。内容にも大満足だ。共同プロデュースは、ロス・ヴァネリ(Ross Vannelli)。AOR畑で活躍するジノ・ヴァネリ(Gino Vannelli)の弟ということは、イタリア系カナダ人。白くなりすぎることを心配するところだが、そこはベテラン。自分は見失わずにソウルしてくれる。また、ロス・ヴァネリも、アース・ウィンド・&ファイア(Earth,Wind & Fire)のプロデュース経験もある人だから、そのあたりは熟知しているのだろう。良い具合にブレンドされている。

-往年のファンにも、これからのファンにも-

低いボトムから始まる①「Here All The Time」は、メロディ的には80年代なのだが、アレンジが90年代という雰囲気で、ラグジュアリーなミディアム。コーラスで参加するデイヴ・ホリスター(Dave Hollister)の野太い声も魅力的である。続く②「Thankful」④「When We're Making Love」は、これぞグレンといえる清潔感のあるスロウ。なんてこのタイトルなのに、こんなに爽やかで…。往年のファンにはたまらないだろう。その間に挟まれた③「Let It Rain」が筆者的にはツボ。これくらいのベッドに近い感覚のほうが、やはり好きである。コーラスには奥様であるジェノビア・ジーター(Genobia Jeter)も一花添えていて、掛け合いをする後半がキキドコロといえる。

雰囲気が変わるのは⑤「24/Seven」。ここでワンクッション入れたというところだろう。明るくポップな装いは、結婚式向きの1曲。ハーモニカとヴォコーダーの組み合わせは、こんなにも明るい雰囲気を演出してくれるんだと改めて感じてしまった。

-スロウでも挑戦する姿勢を見せる-

後半の⑥「Secrets」からは、彼らしいスロウが並ぶ。少しチャレンジしたのかと思えるのは、ボビー・ウーマック(Bobby Womack)がうたってそうな⑨「Baby Come Home」。60's南部の空気が漂っている。これを手がけたのはキース・スウェット(Keith Sweat)でおなじみのフィッツジェラルド・スコット(Fitzgerald Scott)というから驚いた。キースの「Nobody」などを手がけた彼とは思えないくらい“Low”な仕上がりである。また、最後にクワイアが絡んできて転調する⑩「On Your Side」は、さながらグレン風「I Believe I Can Fly」といったところである。

-変わりゆく変わらないもの-

本編はここまでなのだが、ボーナス・カットとして、LAのKISS-FMのアンプラグド・ライブが収録されている。ヒット曲である⑪「We've Only Just Begun」⑫「Show Me」⑭「Here I Go Again」などを並べられると、これらの楽曲のよさを再発見できる。通常、過去のヒット曲を新作に入れるという手法はキライなのだが、このライブテイクには脱帽である。この過去のメロディアスな楽曲とクワイエットの雰囲気を噛みしめると、「よくぞこのようなタイムレスな作品を、1998年に出してくれた(時代的にこのタイプのアルバムは出しづらいから)!」と言いたい。“Changing Same”とは彼のようなアーティストを指す言葉なのだろう。

(2012.06.10)

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