-エドウィン祭り-
前作から外部プロデューサーの招聘数が減少。今回は、筆者待望のエドウィン・ニコラス(Edwin “Tony” Nicholas)の文字がジャケット内に躍るという、前作でのタッグの少なさを覆すものとなった。ジャスパー・キャメロン(Jasper Cameron)がプロデュースした②「Knock Knock Knock」以外はすべて(OH)の文字。オハイオ録音。期待せずには入られない。
しかしながら、一聴して筆者の反応は鈍いもの。いつもこのコンビの楽曲には数曲反応し、やはり、流石、と思わせてくれるのだが、今回は⑰「Rest Of Your Life」まで動かない。これはどうしたことか。
-真骨頂なのだろう-
ジェラルド作品はここからである。もう一度、さらにもう一度と聴き続けるたびにどんどん心を掴まれていく。そういえばこれがレヴァート家の伝統だったと⑯「Eyes And Ears」(featuring Eddie & Sean Levert)を聴きながらニヤニヤしている不気味な筆者。。。やはり味わって楽しめる作品は、たまらない贅沢である。
-スロウとミディアム-
まずは一聴して反応した⑰は、アコースティックギターをふんだんに取り入れたスロウ。ジョー(Joe)がやってそうなセンチメンタルな仕上がり。弦のこすれる音がさらにメロディを引き立てる。
同じく切ない系の④「Awesome」はbpmが遅めで、一音ごとに深みにはまっていきそうなスロウ。後半のコーラスにのるジェラルドのバリトンボイスがソウルフルである。
④からつづくタイトル曲の⑤「Stroke Of Genius」はミディアム。ジャズ感を持つこの曲を、なぜだろう。筆者は受け入れるのに時間がかかった。しかし、前出のとおり聴けば聴くほど気になってくるタイトル「Stroke Of Genius」フレーズのリフ。気がつけば口ずさんでいた。ちなみにこの楽曲は、バリー・ホワイト(Barry White)の「I'm Gonna Love You Just A Little More, Babe」を引用している。
-偶然の一致!?-
おなじみのカヴァー・シリーズ。今回は、まさかのバカラック(Burt Bacharach)作品。カーペンターズ(Carpenters)の⑥「(They Long To Be)Close To You」を選曲している。ほぼ同時期にロナルド・アイズレー(Ronald Isley)バカラックとのコラボ作品[*1]をリリースしているのだが、同曲を取り上げているのは偶然なのだろうか。どちらが勝ちなどということはないが、このジェラルドとタミア(Tamia)のデュエットは、本家の作風をソウルの世界へ招き入れており、カヴァーの意義を感じる仕上がりになっている。
-その声に合ったものを提供したのでは!?-
⑧「U Got That Love (Call It A Night)」は、ジェラルドの熱い声が楽しめる、まさにレヴァート家ならではのバラード。これは父:エディ(Eddie Levert Sr.)が後にリリースする(奥様も出演したビデオクリップもある)「Did I Make You Go Ooh」[*2]に似ている。双方ともエドウィンの手によるものだから、当然といえばそうなのかもしれないが、きっと模倣したというわけではなく、自然とこのヴォーカルに合うものをと尽くした結果ではないだろうか。
-内容とともに結果も残す-
チャートはR&Bでは首位獲得。USビルボードでも6位に入っている。不遇の時代にも安定して売り上げていたジェラルドは、やはり希有の存在だった。
(2021.01.23)
[*1]『Here I Am』(Ron Isley meets Burt Bacharach)。バカラック作品をロナルドが歌ったもの。この作品は、個人的には黒さが全く足りずにあまり聴いていない。もっとバカラック作品をロナルドの土俵で歌うものにして欲しかったと現在でも思っている。
[*2]奥様を目の前に歌で口説いている風の、まさにソウルなPV。楽曲も素晴らしく、個人的にはパパの作品で1番のお気に入りといえる。