1. 『Private Line』
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『Private Line』(1991)1991

Review

-満を持して-

母体であるリヴァート(Levert)が90年にリリースした5th『Rope A Dope Style』からのシングル「Baby I'm Ready」がR&Bチャートを登頂。マーク・ゴードン(Marc Gordon)と手がけたルード・ボーイズ(Rude Boys)の「Written All Over Your Face」がR&Bチャート制覇に加え、ポップチャートでもTOP10入り。
 パフォーマーとしても、プロデューサーとしても、まさに脂ののった時期にリリースされたのがこの1stソロアルバムである。

上記の「Baby I'm Ready」はバラード、「Written All Over Your Face」はかわいらしいミディアムと、どちらにも魅力があるジェラルドの作風であるが、それらの要素が盛り込まれた作品になっている。

-パパとの共演(競演)とアップデートされたスロウ群-

クレジットを確認すると、まず最初に目に入るのはエディ・リヴァート(Eddie Levert)と魅せる、親子共演スロウ③「Baby Hold On Me」。ニュージャックの黎明期に入る直前ような80年代風バラードは、POPチャートでも37位を記録するヒットとなった。AORに近いクワイエットな音作り(でも確実にソウル)に、バリトン・ヴォイスの掛け合いが時折熱くなる(特に後半のパパの暑苦しさが嬉しい)ところがキキドコロである。

他にもスロウが充実。⑦「Just A Little Something」~⑨「Just Because I'm Wrong」の3連群が、この作品の最大の魅力である。との違いは、この3曲は明らかにニュージャックを消化し、アップデータされた音作りになっている点であろう。
 はマークとの共作したアーバン・コンテンポラリー。筆者はと並んでアルバム中随一のお気に入りである。⑧「Hurting For You」は、盟友エドウィン”トニー”ニコラス(Edwin “Tony” Nicholas)との共作である。特にエドウィンとのコンビらしさ全開。計算された目立たないギターのリフが効果的で、ジェラルドのバリトンと絡みつく。
 3曲とも都会を連想させるお洒落なつくりとなっている。ただし、詩のほうに共通していることは、“どの恋愛もうまくいっていない”[1]ことである。良い雰囲気のスロウだからと、安易に結婚式に使えないことをご留意いただきたい。

-ヒット曲がメジロオシ-

オープニングを飾る①「Private Line」は、打ち込みの音にブラスを加えたアップ。タイトルとオープニングの電話の発信音とプッシュ音に時代を感じるのだが、それがまた良い。てっきり、“僕の電話にかけてきて!”というオシオシの内容かと思いきや、“もう傷つきたくないから、電話をかけてこないで”という詞に驚かされてしまったが、緊張感のある音にはしっくりとはまる。シングルは、R&Bチャートを制覇した。

その他、ルード・ボーイズが歌ってもよさそうなミディアム②「School Me」がR&B3位、④「Can You Handle It」が同9位、ジェラルド色が薄いニュージャック風の⑪「You Oughta Be With Me」が同7位と、このアルバムから4曲のヒットを送り出した。

決して売りには走っているわけではないジェラルドだが、楽曲をリリースすれば売れる。良い音楽が売れるという当たり前のようで難しい状況を両立していたことは、現在考えると奇跡のように思える。
(2020.01.17)

[1]上手くいっていないといっても、⑧「Hurting For You」はこれから始めようとしている前向きな内容。

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