1. 『Gerald's World』
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『Gerald's World』(2001)2001

Review

-前作を軽く飛越-

前作から1年のインターバルでリリースしたソロ5作目、かつ、”G“三部作の真ん中に位置する作品である。結論から言うと、前作を大きく凌駕する充実作となっている。セールス的にも前作よりも分かりやすかったこともあり、R&Bチャートは2位を記録している。  

-いつものように、旬の作家人を迎える-

前々作・前作では2000ワッツ(2000watts)を起用していたが、今回迎えたプロデューサーはマイク・シティ(Mike City)である。カール・トーマス(Carl Thomas)「I Wish」、デイヴ・ホリスター(Dave Hollister)「One Woman Man」というセールス的にも楽曲的にも飛びぬけて素晴らしい2曲をプロデュースした、まさに脂ののった最高の時期に①「Soul Mate」⑧「Same Ol'」を提供している。
 筆者の期待が大きかったことが一因だろうが、「I Wish」級のものではなかった。しかし、決して悪くない。特には、マイクの得意とするループが展開されるミディアムなのだが、これらがかすんで感じるほど、他の楽曲が良いということなのだろう。

-ミディアムが心地よくて-

ミディアムの②「DJ Played Our Song」は、これぞトレヴェルというような横揺れダンサー。こういう楽曲にはジェラルドが多少力を抜いて歌っているのだが、時折見せるソウル魂の漏れがたまらない。チャカポコ・ギターの⑥「Smile For Me」もかわいくまとまったミディアム。ドネル・ジョーンズ(Donell Jones)の「You Know That I Love You」を思い出す[*1]

-スロウ中心の中身はいつも通り-

スロウはいつも通りながら、いつも通り聴きごたえ充分。どれも挙げたいが、変則ビートで時流に合わせるところをみせつつ“Love T.K.O.”[*2]と歌う⑦「Can't Win」や、ヴォーカルをイジって遊んでいながら、どことなく哀愁を感じる⑬「What You Cryin' About」など、どれもソウルの歴史を重んじていて、ブレがない。
 その中でも、クール・アンド・ザ・ギャング(Kool & The Gang)「Summer Madness」風のトラックである⑩「Got Love」は出色の出来。フレンチ・ホーンの音色に古を覚え、バイオリン、ビオラの主張しないフォローが嬉しい。最後はジェラルドのバリトンヴォイスで締めくくるあたりが完璧といえる。

-ゴスペルとソウルは、やはり蜜月-

ゴスペル方面からの参加はJ-DAVからスティーブン・ギャレット(Stephen Garrett)と、ウォーリン・キャンベル(Warryn Campbell)が参加。後者は王道スロウ⑫「Made To Love Ya」を提供している。もちろんその楽曲も良いのだが、驚いたのはシークレット・トラックとなっている⑯「Made To Love Ya(L.O.V.E.Remix)」である。もはや別曲ではないかというほど、深々したスロウに生まれ変わっている。ここに時折甘いジェラルドの声が絡んでくることで、切なさが倍増。ウェルウェルも出てきて、ソウルファンとしてはたまらない終幕を迎える。

-ワーカホリックでありながら-

冒頭に述べた通り、前作から1年のインターバル。その中でこれほどの充実作を作ってくるところがジェラルドなのだろう。そして1年後に次作をリリースするという離れ業。ミュージシャンになるべくして生まれた出自も含めて他にはない才能だったと、早すぎる逝去を残念に思う。
(2020.12.28)

[1]思い出す、と言ってもドネルの作品は、このアルバムより1年後にリリースされている。
[2]©テディ・ペンダ―グラス(Teddy Pendergrass)

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