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『G』(2000)2000

Review

-んん??-

ジェラルドの作品はどれも“噛めば噛むほど味が出る”わけだが、この2000年代初のアルバムは、その作品群の中でも特にスルメ感が強い。正直なところ、最初はあまりピンとこなかったわけだが、この一聴して地味と言える作品は、やはり長く楽しめるものになっている。このあたりは、もはやジェラルドのお家芸なのかもしれない。  

-冒頭は時流を踏まえて-

前作ではプロデュースを他に任せたものも多くあったが、その中でも抜群の相性をみせてくれた2000ワッツ(2000watts)が、今回もディライト(Darrell “Delite” Allamby)を中心に冒頭の3曲を担当。幕開けの①「Application(I'm Lookin 4 A New Love)」は特に彼ららしい力強いプロダクション。これにジェラルドのバリトンが絡まることによりシナジーが産まれ、この組み合わせの意義を感じられる。
 怪しい雰囲気から始まる②「Callin' Me」は、変則ビートにヴィブラスラップがやたら登場することで、最初は非常に戸惑ってしまった。いずれにしてもジェラルド感は希薄である。
 ③「Nothin' To Somethin'」は冒頭からウェルウェルが登場したり、コーラスの魅せ方がアイズレーズ(The Isley Brothers)風なスロウ。もちろん聴きごたえのあるスロウだが、ここでもヴィブラスラップ[*1]が!“ディライトはこの頃、この音にはまってたのか!?”と疑いたくなるほどである。

-あえてのケリーを前面に-

おなじみのゲストは⑤「It Hurts Too Much To Stay」で登場。今回はケリー・プライス(Kelly Price)である。このは、“ケリーに食われてしまった”との見解もあるようだが、それはケリーがプロデュースを担当したことに起因する。また、ジェラルドもそれを望んでこの楽曲を仕上げたのだろう。ゴスペル寄りの二人の声の競演・共演・饗宴が楽しめる。

-身内の作品は-

残りのプロダクションは、いつものトレヴェルによるもの。毎度おなじみのセリフになってしまうのだが、本当に安心印である。

どれも甲乙つけがたいのは毎度のことであるが、ジェラルドとエドウィン(Edwin “Tony” Nicholas)コンビの楽曲である④「Strings, Strings」を推したい。いつもの二人を感じながら、でも新しいリズムを刻むという、新しくも懐かしい雰囲気が楽しめる[*2]。また、こちらもおなじみルード・ボーイズ(Rude Boys)ジョー・リトル(Joe Little Ⅲ)による王道スロウ⑥「Mr. Too Damn Good」も間違いなし。前作でR.ケリー(R.Kelly)が提供した「Men Like Us」の延長に位置する[*3]

-オージェイズ風味を楽しめる-

ひそかなゲストと言えるのがグラミーにもノミネートされた実力派クレイグ・T・クーパー(Craig T.Cooper)である。パパ・リヴァートのオージェイズ(The O'Jays)とも親交のあったギタリストでありプロデューサーを起用するあたりが、オールドファンの心をつかむ。⑫「Baby U Are」では、作曲、ギターのほか、様々な楽器もこなしている。古いソウルのエッセンスをアップデートさせたミディアムは、明らかにアルバムの価値を高めている。

-アルバムならではの楽しみ方-

飛びぬけた楽曲はない。しかしながら、じっくりと全編を曲順通りに良い音、良い環境で聴く。当たり前のことなのだが、これが正しい向き合い方なのだと思う。サブスクリプションを否定するつもりは毛頭ないのだが、本当に音楽が好きであれば、落ち着いて聴ける環境は必要だと改めて感じた[*4]
(2020.12.15)

[1]演歌でよく用いられている“カーッ”という音が出る楽器。千昌夫「与作」を思い出すのは、筆者が40歳overだから。
[2]リズムとクラップが、ディアンジェロ(D'angelo)「Nothing Even Matters」を彷彿とさせる。
[3]LSGの「My Side Of The Bed」好きとしては、こういった王道スロウを1曲配置してもらえるのは非常にうれしい。
[4]今回、この作品のレビューを記述するにあたり、移動中にスマホでspotifyから聴いた。自宅に帰り、改めて整った環境で聴きなおすと驚くほど印象が変わった。コレって本当に大切なことだなと、久しぶりに初心に回帰した。

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