1. 『Something To Talk About』
  2. GERALD LEVERT & EDIIE LEVERT Sr.
  3. artist
  4. privatesoulmusic
『Something To Talk About』(2007)2007
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Review

-え!?新譜なの!?-

ジェラルドの遺作は前出の『In My Songs』。しかし、生前に新譜をもうひとつ残しておいてくれた。それがこの親子共演作の第2弾である。筆者は予想もしていなかったので、同時うれしさと寂しさと、「え!?新譜!?過去の作品群じゃないの!?」という驚きと、複雑な心境になったことを思い出す。天国のジェラルドからファンへのプレゼントになってしまったことは残念だが、こうやってリリースされていることだけでもありがたい。

-連なるミディアム群-

制作している段階から最後の共演盤になるとは思っていないわけだから、当然作品もしんみりしている訳では無い。時流も意識しながら、いつものリヴァート家の流儀である。
 出だしからミディアム群が並ぶ。二人の声の分厚さを堪能する①「S.O.S.」は、ずれそうでずれない微妙なリズム感の中を自由に行き来するパパの野太いコーラスと、清涼感のあるピアノが少しだけ登場するというバランス感覚が楽しめる。
 ミディアム・ダンサーともいえる②「I Like It」は、エディ・パパの作。それをジェラルドとエドウィンがプロデュースしているという最高の味付け。エドウィンのアップデート感覚は、打ち込みの音のセンスの良さなど、非の打ち所がない。
 スロウなステッパーの③「Close & Personal」は3人の共作。横揺れのフロア、チルアウトがよく似合う。
 この3曲だけですっかりこの作品の世界へ入り込んでしまう。

-二人の声を楽しめるのは、やはりスロウ-

④「That's What I Do」は王道バラード。前作で感じた印象の「甘えたジェラルド」と同様、エディの声に寄り添うような甘えたジェラルドの声。共演盤ならではの楽曲である。つづく⑤「Bad Habit」もスロウ。こちらは語るように、諭すように歌い上げる。二人にしては吠えていないところ、途中でジェラルドがロングトーンを入れてくるなど、この曲だけの楽しみが詰まっている。
 ⑥「Slip Away」はやや南部系のスロウ。これはエディの声が相まって、古き良き時代の感覚である。

-カヴァーシリーズも在中-

おなじみカヴァーは⑦「Something To Talk About」⑧「Make It With You」はタイトル曲ではあるものの、ちょっとラフな雰囲気が筆者的には苦手。元が他ジャンルといえるから仕方が無いかもしれないが・・・。それよりものほうが好感が持てる。L.A.のソフト・ロックバンドであるブレッド(Bread)の1970年の全米No.1ヒットであるわけだが、この白い曲をソウルに持って行くところは、アイズレーズ(The Isley Brothers)同様、もはやお家芸であろう。[*1]

-ふたりらしさ-

この先も、ギターによる刺され感が印象的な⑨「Tapped」や、まさにエディの世界観のフィリー・ソウルな⑩「A Situation」、ピアノのシンプルな構成で、まさに歌を楽しむべき⑫「The Simple Life」など、最後まで落ち着いて聞かせてくれる。その中でも、ジェラルドらしいというのは⑪「Get To Know Me」ではないだろうか。優しげなギターのリフを入れながら、コーラスと絡めたサビのあしらいなど、ジェラルド&エドウィンの王道のメロディラインに、改めてジェラルドがいなくなった寂しさを感じてしまう。

-感 謝-

こういった録音を終えての逝去となると、お蔵入りすることが多いわけだが、エディら他の尽力により、無事に届けられた。そして、これからもサポートしてくれるであろう彼らファミリーに改めて感謝の心を示したい。こころからありがとうと。

(2021.03.07)

[*1]テディ・ペンダーグラス(Teddy Pendergrass)も取り上げた同曲。テディ・バージョンはもっとスロウに、ねっとり仕上げている。こちらも推したい。

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