1. 『Gene Rice』
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『Gene Rice』(1992)1992
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Review

-テディペン似。バリー・ホワイトも!?-

1stのライナーノートにも松尾“KC”潔さんが記しているとおり、その歌声はテディ・ペンダーグラス(Teddy Pendergrass)を思い浮かべる。そして声だけでなく、叙情的な歌い回しは、日本で言う”演歌“的なものなのかもしれない。それだけ特徴的な歌声は、それだけで大きな武器になることは間違いない。

上記ライナーノートにKCさんは、テディペン以外にも一人名前を挙げている。それがバリー・ホワイト(Barry White)。個人的には、“そこまで低いバリトン・ヴォイスではないよね”と思っていたのだが、今回の⑤「I'm Gonna Love You Just A Little Bit More Babe」を聴いて、なるほど!こういうことか!と唸ってしまった。このR&Bチャートを制した楽曲のカヴァを聴くとその答えがわかる。Bメロの“’Cause Deeper and Deeper…”のところは、本家では低すぎて聴き取りづらいのだが、このジーンのヴァージョンでは解消されていたりと、とても聴きやすくなっているように感じる。相対的に、本家を越えている珍しいカヴァではないかとまで思っている。

-ロスとクリーヴランドでの録音-

今回のプロデュースは、大きく分けると2つのサイドに分かれている。前作から引き続きスタン・シェパード(Stan Sheppard)一派と、リヴァート(Levert)一派である。
 ジーンの後見人であるスタンのLAサイドには、今回チャッキー・ブッカー(Chuckii Booker)の参加が目を引く。③「Come A Little Closer」も悪くは無いが、どちらかというと①「I Fell In Love」のほうが、まさしくチャッキーらしいアップ。この曲を1曲目に配置するのは、この作品として当然といえる、勢いのある楽曲になっている。
 その他、スタンは前出のや、スタンの得意とするレトロ・ヌーヴォー感たっぷりの⑦「I Can't Wait」や、ニュージャックに寄せてしまった⑧「You Need A Change」、王道スロウの⑨「Don't Walk Away」を手がけているのだが、やはりジーンの歌い回しを理解しているような楽曲が多いことがわかる。
 リヴァート軍も、当然のことながら流石のサポート力である。領袖であるエディ(Eddie Levert)を筆頭に、リヴァート(Levert)のメンバー、メン・アット・ラージ(Men At Large)ルード・ボーイズ(The Rude Boys)も参加するという、トレヴェル(Trevel)ファミリーが集合している。
 このオハイオサイドで推したいのは、②「Let Me Show You」⑥「Let Me Do You Right」。リヴァートらしさが詰め込まれたアップであるは、まさしくジェラルドとニコラス(Edwin Nicholas)だろうとわかるようなメロディライン。ベースを基本にチャカポコ・ギターも入りつつ、さらにジーンの歌声を絡めていく。ジーンにアップを歌わせるのはなかなか難しいような気もするが、歌いすぎないようにさせているところがこの楽曲にははまっている。逆にでは、ジーンらしさを優先させたようなスロウ。歌い出しのシャウトは、ジェラルドもよくやるような手法である。そしてブリッジ部分の吠え!これがバリトン・ボイスの魅力であり、待ってました!の構図なのである。

-合う、合わないの問題-

気になったのは、マーク・ゴードン(Mark Gordon)シーン(Sean Levert)による④「Who's Pleasin' You」。楽曲が悪いわけではないのだが、やはりジーンにはストレート過ぎるニュージャックはしっくりこないということだった。もちろん、流行も考慮して楽曲提供したのだろうが、これは合わなかったとしか言いようがない。

-配信の時代だからこそ-

上記のように、確かに時流には乗れなかったのかもしれない。しかし、ジーンのようなシンガーの系譜は残すべきものであることは間違いない。配信中心の時代なら、(経費の面を考慮すると)新作もリリースしやすくなっているのでは無いだろうかと、勝手な想像をし、期待をしている。

(2021.12.18)

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