1. 『The Mood Of Midnight』
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『The Mood Of Midnight』(1995)1995
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Review

-我が道を進むというダンディズム-

彼が主催するモーニング・クルー(Morning Crew Music, Inc.)のWeb上にはこのように記している。

「メインストリームの音楽ではない」(We Are Not True To Mainstream.)

なんて潔いのだろうか。この作品が生まれた1995年といえばニュー・クラシック・ソウルが台頭していた時代であり、ゲイリーの音楽性から考えると、かなり近い距離でこの流れに乗れたような気がする。がしかし、である。変わらない一貫性。これをつまらないという人もいるだろうが、筆者は変わらないことの強さを感じる。そのころから、上記モーニング・クルーの記述の意識…というかやりたいことをやり通すという姿勢があったのだと思料する。

-オトナの男、オトナの女-

いつも通りの幕開けという感じの①「In Search Of 」からアダルトな世界。妖艶な雰囲気に柔らかいゲイリーの声。当たり前のような安心感に包まれ、全編を通して聴く作品であることが理解できるはずだ。

そのなかでも、2曲のデュエットの秀逸さが光る。特に③「Special」は、正統派な、真摯な世界観でありながら、ポップになりすぎない、きちんとソウルバラードになっているところがたまらない。デュエットのブリジット・ブライアント(Bridgette Bryant)[*1]の澄みわたるハイトーンもこの楽曲にはしっくりとはまる。⑦「Special (Reprise)」にリプライズしているあたりは、ゲイリーも力を入れた1曲だったのではないだろうか。

⑩「I Will Be Here 」と同様のスロウ。マーヴァ・ヒックス(Marva Hicks)[*2]のアルトな、控えめの歌い方は、いかにもゲイリーに寄せているなという印象。もっと吠えてほしいといつも言ってしまう筆者だが、この曲はこういったウィスパー系の歌い方が正しいのだろうと思わされた。

-敷き詰められた佳曲たち-

そのほか、でサックスがメロディ・ラインを描くヴァージョンを収録したシンプルな音作りによる⑥「Time's Run Out of Time」、 当時としては打ち込みの古さがあったのだろうが、今となってはそれを楽曲の良さで凌駕している⑧「One Day at a Time」[*3]や、打ち込みの音作りでソウルするゲイリーの真骨頂とも言える⑫「Rest My Lips」など、とにかく全編を通して聴くことをお勧めしたい。

(2020.03.17)

[1]セッションシンガーとして活躍。2011年にソロ『Soulmate Collection』をリリース。
[2]ヴァージニア州出身。シンガー兼女優。1991年にセルフ・タイトルのアルバムをリリースしている。
[3] 海外ではこの楽曲のタイトルが、アルバムタイトルになっている。

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