1. 『My Heart Belongs To You』
  2. FRANKIE
  3. artist
  4. privatesoulmusic
『My Heart Belongs To You』(1997)1997
frankie-my_heart_belongs_to_you

Review

-憂鬱なジャケット-

俯いた顔。キャスケットで表情は見えない…。90年代中期の男性ソロシンガーにありがちなフォトワーク。それを見て、「こいつぁ~歌える!」と思われた方も多かったのではないだろうか!?Mr.寂しん坊ことフランキーが唯一残した作品である。

-渋すぎる内容-

97年という発売時期を鑑みると、自作自演系!?と思ってしまいがちなのだが、本人は数曲で詞を担当しているに過ぎない。サウンド面は、全編チャッキー・トンプソン(Chucky Thompson)が支配しているのだが、ヒップホップ・ソウル・テイストは後退し、彼のロマンティック・サイドの粉が、ふんだんに散りばめられている。それゆえ、いわゆる「噛めば噛むほど…」的な味わいが楽しめる。しかし、19歳でこんな渋い作品を残すとは…。

-90年代を代表するスロウを収録-

フェイス・エヴァンス(Faith Evans)の声が聴けたり、メアリーJ(Mary J.Blige)が作曲で参加したりしている楽曲は話題を呼んだ。確かに、アイズレーズ(The Isley Brothers)「Summer Breeze」のサンプリングか?と思ってしまう⑦「Think Of You」(ちなみにアイズレーのサンプリングは⑬「My Heart」のなかに、「Footsteps In The Dark」を全面的に使用している。)の、後半にフェイスが声を張らずに入ってくるスロウも良い。メアリーのナスティ系の提供曲⑧「All I Do」も、彼女らしさとフランキーの声が溶け合って気持ち良い。しかし、何を置いても⑫「Have I Told You ( I Love You ) 」だろう。イントロから続く、トロトロのチャカポコ・ギター。後半のブリッジ手前の盛り上がり。最後の語るように歌うところ…。彼らしさが一番出ている曲なのではないだろうか。90年代を代表するスロウと言っても過言ではないだろう。

-ギターの音色-

さらに惹かれるのは④「I Have Love」⑥「Dear Love」の一連の流れ。このスロウ群には、ゆったりと心を預けてしまいたくなる。も含めて、これらどちらにも共通しているのは、ギターの音色が効果的であることだ。基本的にギターが目立つと、ロッキッシュになるか、フォーキーになるかなので、筆者としては多少苦手な方面。しかし、ここではどの楽曲をとってもしっかりソウルしている。この辺はチャッキーの腕によるものなのだろう。

また、アルバムの雰囲気を考えてなのか?唯一踊れそうな⑩「I Can Tell」ですら、湿度高め。別のアレンジにしたらすごく明るい、ハッピーな曲になりそう。ケヴォン・エドモンズ(Kevon Edmonds)とかが歌いそうなメロディ・ラインだ。こういった配慮は大歓迎だ。

-この作品が好きであるならば必ず-

この作品が好きな方は、間違いなくマリオ・ワイナンズ(Mario Winans)『Story Of My Heart』を好むだろう。同じ年にリリースされ、うつむいたジャケット、タイトルにも“My Heart”という共通するフレーズが。偶然なのだろうが、こういった暗いベールをまとった作品がリリースできていた90年代は、本当に恵まれた時代なのだと改めて感じた。

アルバムをリリースしたのがこの1枚だけだったことも相まって?すっかり好事家たちが名前を挙げる定番になっている。しかし、そのわりに市場価格は低く、比較的手に入りやすい作品。手に入れない理由は、そこにはないと思う。

(2012.08.19/2014.11.09)

List

TOPへ