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『The Fall Backs Of A Playa』(1998)1998
ENTOURAGE-The Fall Backs Of A Playa

Review

-メンバーにソウル・マニアが!?-

18曲中、5曲にインタールード(Interlude)が配置されている。そしてそれを“Segue”と標記している。プリンス(Prince)が用いる手法である。それを一見したときからその予感はあった。きっとソウル・マニアがいるな、と。聴き進めていくと、その予想が見事的中。しかもそれらの楽曲がこの作品の核になっており、たまらなくいとおしくなってしまった。それぞれの楽曲に隠れているレジェンドの影(本人は参加していない)を発見することが出来る。

-キースとアイズレーズと-

まずはシングルになり、R&Bチャート65位を記録した④「When」にはキース・スウェット(Keith Sweat)が。「Make It Last Forever」のキラキラ感を少し抑えて、コーラスグループ向けにしたような、シルキー感が昇華したメロディ・ラインとコーラス・ワークに好感が持てる。ファルセットのコーラスと、リードの吼えが混ざり合う後半など、もう少し聴いていたい!と思わせてくれる。

キースが再度登場するのは⑭「Turn U Out」アイズレー・ブラザーズ(The Isley Brothers featuring RONALD ISLEY)に提供した「Slow Is The Way」を彷彿とさせるサビのコーラスが穏やかな気持ちにさせてくれる。コーラスもキースに似せたところがあったり、途中の語りの部分で「Between The Sheets」とか言っちゃってるところから、狙ってるとしか思えない。

アイズレーの話になったが、まさしく彼らをなぞったのが⑦「Come Back Home」だろう。他のサイトでいろんな方が同様に語られているが、筆者も同感である。まず出だしのギターから歌いだされる声は、アーニー&ロナルド以外の何ものでもない。ヘタしたら『Mission To Please』以降のアイズレーズのアルバムに入っていても、気付かないのでは!?と思わせてくれるほどソックリなのである。こんな甘美な世界は、実力が伴わずに模倣すると、安っぽいものになってしまいがちなのだが、彼らはいとも簡単にそのハードルを乗り越えてしまっている。

-ベイビーフェイスとリヴァートと-

正統派バラードの⑥「Why Did You」は、ベイビーフェイス(Babyface)がコーラスグループに提供するような楽曲。ピアノとファルセットからサビへのコーラスに入っていくところは、さながらボーイズⅡメン(Boyz Ⅱ Men)といったところか。⑨「Here With Me」にも共通した雰囲気があるのだが、こういったシンプルな楽曲で感じられるのは彼らのウタヂカラである。ただ歌い倒す(筆者はそれも好きですが…)だけでなく、抑揚を聴かせ、時には歌い方を変える。全員がリードをとれるらしい彼らならではであろう。

ちなみに配置されたセグエでも、リヴァート(Levert)「(Pop Pop Pop Pop)Goes My Mind」が始まるのか!?と思わせられた⑪「Fall Back Segue」や、R.ケリー(R.Kelly)「Bump N' Grind」のフレーズがモロに登場している⑯「Making Love」など、いろんな要素が配されている。これも面白い。

-自分たちで楽曲が創れる実力-

クレジットを確認してみたが、あまり知っている名前は並んでいない。それもそのはず。この作品はインディリリースなのである。現在のように、まだまだネットでの購入が進んでいない98年作。これは仕方の無いことであろう。ようやく見つけたのは、シカゴで活躍するM-Docの名前が⑧「Party Tonight」⑫「Fall Backs Of A Playa」などに記されている。これらが決して悪いわけではないのだが、他の楽曲のほうが良いと感じさせられた。彼らの強みである、自分たちで楽曲の制作ができるところが良い意味で目立った結果なのだろう。スリック(Slick)を中心に、ほとんど全ての楽曲制作に参加している。

インディのコーラスグループ盤というのは、オークションなどで時にものすごい値が付くことがある。この作品もそんな1枚かもしれないが、筆者は場末の中古CD店で発見している(1,980円!ラッキー!)。マニアでなくとも掘り当てる価値は充分すぎる作品であることを断言しておきたい。

(2012.08.19)

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