1. 『Traded 51:15』
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『Traded 51:15』(2004)2004
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Review

-「Soul Digger」 月間1位-

筆者にとって、最も信用できるチャートである、「BMR」誌の石島春美さんのコラムで月間第1位[*1]を飾った本作。ジャケットからも想像できる通り、黒汁のにじみ出る作品である。

-ハードルを上げすぎたが-

前掲の理由から、筆者が勝手にハードルを上げてしまった。正直、①「Get Down」②「Keep It Bouncin'」は苦手。これはもしや…と思っていたところに聴こえてくるのは③「Bedroom」。そう、こういったスロウを待っていたのだ。むせび泣くギターと控えめの鍵盤音に濃度の高いヴォーカル。石島さんのコラムタイトルを借りると、だからソウルの掘り起こしは辞められないと改めて思わせてくれた。

-作品はスロウばかりを聴いてしまう-

他にもこのタイプのスロウが詰まっている。⑤「Traded」は彼らの見た目と異なるテナーヴォイスとファルセットが楽しめる。マリオ・ワイナンズ(Mario Winans)風の⑦「I'm Done」に続く⑧「Y U」もまた秀逸。アコースティックギターのリフが丁寧に編み込まれ、そこにやさしく丁寧に言葉を落としていく。アコギが絡むとソウル色は減少することが多いのだが、この楽曲にはそれがなく、しっかりとソウルしているところが嬉しい。そして組曲のように続いていく⑨「Delete」も同様の仕上がり。

インタールード風の⑪「Naked Truth」はほぼ語りのみ。背景に重たいギターの音色や、兄の恋人なのではないかと思わしき女性の声[*2]が絡んでくるあたりに、アイズレーズ(The Isley Brothers)への憧憬も見えてくる。また、ポップなスロウ⑬「Black Rose」も、アルバムの最後にはあり[*3]だろう。最後がライヴ風に終わっていくのが良いのかどうかはわからないが…。

-濃厚な世界観を-

彼らの実力であれば、セカンドも出せるのかと思っていたが、なかなか厳しい世の中である。今回筆者はアップのことは書いていないが、それは個人的な趣味の範囲であり、バウンシーな世界観が好きな方にはたまらないと思う。なにより筆者的には、この濃厚な方向性を持ち合わせる若手としてシーンに戻ってきて欲しいと願っている。

(2020.02.24)

[1]石島春美「Soul Digger」『BMR』2005.01
[2]クレジットに、ケオシャ・ムーア(Keosha Moore)とあり、兄のスペシャル・サンクスでそれらしいことが書いてあるのだが…。詳細は不明。
[3]こういうポップよりの楽曲が作品の途中に入ってくると、ちょっと…、と思うこと多々あり。R.ケリー(R.Kelly)も、最後に持ってきガチな気がする。

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