-知らなかった元ネタ-
出自を考えれば、もっともっとヒップホップよりになってもおかしくはなかった。聴く前に、作品中①「Something Special」にデイナ・ダイン(Dana Dane)による「Dana Dane With Fame」を、②「Love Thang」にキッドゥン・プレイ(Kid N' Play)「Rolling With Kid N' Play」をサンプリングしているという情報を持っていたとしたら、手に取らなかった作品かもしれない。
しかし、筆者は幸い(!?)にして、2つの元ネタを知らなかった。情報としては「レオン・シルヴァーズ(Leon Sylvers Ⅲ)の関与」だけであった。よって、80年代風のファンク色の強いグループと認識していた。
-シングル用として作られた楽曲-
その予想は当たらずしも遠からず。予想以上に90年代風の処理が施されていた。特に前出の①は、シングルにして当然!という仕上がりである。イントロからAメロに入るところのメロディ[*1]が若干下世話な気がするが、それがシングルに求められるものかもしれない。ニュージャックを意識しながらも、そこから抜け出す準備が整ったような、時流を感じる1曲になっている。
直後の②も方向性としては同じでありながら、どちらかというとエッジの効いたファンク。ヒットを狙うというより、グループの方向性を示す曲だったのではないだろうか。最初の女性の喘ぎ声があまり理解できないが…。⑥「Deliver」もBPM高めのファンク。これはなんとなく、トロイ(Troy)を思い出してしまった。
-スロウも丁寧に-
前述の通り、ファンク~ヒップホップ要素が特徴のグループであることは間違いないのだが、スロウも器用に対応。④「Together We」は正統派のキラキラ80年代風。⑨「Good Love」は、いかにもなニュージャック・スロウ。個人の好みもあるだろうが、やはり⑨のほうに軍配があがる。ロバートの粘着系のテナーヴォイスが程よく溶け込んでいる。
-不思議なバランス-
92年のリリースだからなのだろうか。80年代の音、ニュージャック、ヒップホップと、いろいろなものを吸収しているとも言えるような、狙いが定まっていないような。しかし、アルバムを聴いてみると通して聴ける。この不思議なバランスが、本作品の最大の魅力なのかもしれない。
(2020.03.23)