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『Double Action Theatre』(1992)1992
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Review

-知らなかった元ネタ-

出自を考えれば、もっともっとヒップホップよりになってもおかしくはなかった。聴く前に、作品中①「Something Special」デイナ・ダイン(Dana Dane)による「Dana Dane With Fame」を、②「Love Thang」キッドゥン・プレイ(Kid N' Play)「Rolling With Kid N' Play」をサンプリングしているという情報を持っていたとしたら、手に取らなかった作品かもしれない。

しかし、筆者は幸い(!?)にして、2つの元ネタを知らなかった。情報としては「レオン・シルヴァーズ(Leon Sylvers Ⅲ)の関与」だけであった。よって、80年代風のファンク色の強いグループと認識していた。

-シングル用として作られた楽曲-

その予想は当たらずしも遠からず。予想以上に90年代風の処理が施されていた。特に前出のは、シングルにして当然!という仕上がりである。イントロからAメロに入るところのメロディ[*1]が若干下世話な気がするが、それがシングルに求められるものかもしれない。ニュージャックを意識しながらも、そこから抜け出す準備が整ったような、時流を感じる1曲になっている。

直後のも方向性としては同じでありながら、どちらかというとエッジの効いたファンク。ヒットを狙うというより、グループの方向性を示す曲だったのではないだろうか。最初の女性の喘ぎ声があまり理解できないが…。⑥「Deliver」もBPM高めのファンク。これはなんとなく、トロイ(Troy)を思い出してしまった。

-スロウも丁寧に-

前述の通り、ファンク~ヒップホップ要素が特徴のグループであることは間違いないのだが、スロウも器用に対応。④「Together We」は正統派のキラキラ80年代風。⑨「Good Love」は、いかにもなニュージャック・スロウ。個人の好みもあるだろうが、やはりのほうに軍配があがる。ロバートの粘着系のテナーヴォイスが程よく溶け込んでいる。

-不思議なバランス-

92年のリリースだからなのだろうか。80年代の音、ニュージャック、ヒップホップと、いろいろなものを吸収しているとも言えるような、狙いが定まっていないような。しかし、アルバムを聴いてみると通して聴ける。この不思議なバランスが、本作品の最大の魅力なのかもしれない。

(2020.03.23)

 

[1]サンプリングの元ネタを知らない筆者は、このメロディこそが引用と思ったのだが、どうやら違う模様…。

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