-BMFNレコーズ-
2003年12月に開設されたWebサイト、“ブラックミュージックファンネット(blackmusicfan.net)。日本のR&Bのすそのを広げようと、分かりやすい記事や解説が盛り込まれていた。その活動の一環としてBMFNレコーズをスタートさせたのが2005年4月。第1弾アーティスト“メトロポリス(Metropolis)”、第2弾“U-NAM”と、インディ・リリースのものを取り上げてくれていたのだが、そのうちのひとつとしてリリースされたのがこの作品である。UKでのヒットを受けて、日本盤の作成を取り付けたようだ。
-ワシントンD.C.人脈-
作品は、彼の所属していたダイバーシティ(Diversiti)のアルバムと同じ布陣。デヴォン本人とレジナルド・スタッガーズ(Reginald Staggers)の2人が全ての楽曲を手掛けている。このレジナルドという人物は、ワシントンD.C.出身のエンジニアで、弟であるマーク・スタッガーズ(Marc Staggers)[*1]とのコンビで活動。兄が制作担当、弟がアーティスト担当という形で、コンテンポラリー・ゴスペルを届けてくれている。そのレジナルドの初期の作品ということになるだろう。
-前に出すぎないヴォーカル-
そんな彼が手掛けているわけだから、コンゴスに近い形か…と言われればそこまでではなかった。①「About You」からシッカリとR&Bをやってくれている。この①は、背景にクール・アンド・ザ・ギャング(Kool & The Gang)の「Summer Madness」のようなギターのリフが仕組まれており、妖艶な雰囲気を作り出している。この辺りでR&Bと確信することができる。切なく歌うデヴォンの声も出すぎず、アルバムタイトルに持ってきたことも大正解だったであろう1曲である。
続く②「Tell Me Again」もイントロから色気が漂う。途中に「sukiyaki」のフレーズが出てくるのが気になって仕方ないが、そんなに雰囲気を壊してはいないので、まぁご愛敬というところだろう。
ミディアムの③「Tonight」は一転して明るく。デヴォンの軽い声には一番合っているようだ。④「Be The One」もミディアムではあるのだが、こちらは多少重たくせまる。
ダイバーシティをフィーチャリングした形の⑤「B Here 4 U」は当然のようにスロウ。もともと歌いこむグループではないことはわかっているのだが、あまりにさらっと歌ってしまっているように聴こえてしまう。期待値が高かっただけに、筆者としては物足りなかった。
-ん?どうした?という部分も-
⑥「I Remember」までの前半は、吠えることはなくとも[*2]良曲が並んでおり、とても好感触。後半への期待が高まったのだが…。⑦「Beautiful」のイントロのギターの雰囲気、⑧「Can You Feel It」のイントロや⑪「How We Do」のチープ感…。そして最後を締めなければならない⑮「Some Of Us」の単調なリズム…。ちょっと気になる点が多数見受けられることになってしまった。
そんな後半でも、スロウの⑨「Give It All Up」や、アース(Earth, Wind & Fire)の「Brazilian Rhyme」が聴こえてくる⑩「Hey Shortie」、タイトルだけ見て、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の「If This World Were Mine」のカヴァ[*3]!?デュエットは誰!?とハヤトチリしてしまった⑫「If This World Was Mine」のダークな雰囲気、など持ち直す部分も。アコースティック・ギターが温かい⑭「I'm Sorry」でクロージングしても良かったのではないだろうか。
(2021.09.24)
[1]歌声がルーサー・ヴァンドロス(Luther Vandross)にそっくりと話題になったアーティスト。現在も兄弟で活動を続けている。
[2]吠えることだけが良いとは思っていないのですが、どうしても熱いものが好きなもので…。
[3]ルーサー・ヴァンドロスとシェリル・リン(Cheryl Lynn)のヴァージョンももちろん大好きですが、タイリース(Tyrese)とココ(Coko)のヴァージョンも推したいです。