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『Total Shock』(2006)2006
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Review

-自信のあらわれ-

ゴスペラーズの村上さんが、90´s R&Bグループの特集をすると必ず一番のお気に入りと話す楽曲。今は亡きディノ・コナー(Keven "Dino " Conner)が唸る、H-TOWN「Knockin' Da Boots」である。このR&Bチャートを制した、そして後世に語り継がれている楽曲をカヴァーすることは容易ではない。しかし、このトリオは臆することなくデビュー作で挑戦している。原作に近いアレンジで勝負するというのは、ウタヂカラに大きな自信を持っているからなのだろう。結果として、文句なしに聴かせてくれた。流石オハイオ産、とでも言おうか。

-やはりスロウが似合う-

そんな彼らのデビュー作だが、全面プロデュースを請け負ったのはスムース・アプローチ(Smooth Approach)ジェフ・ロバ―ソン(Jeff Roberson)である。彼の得意とする濃密な世界観が詰まっている。

しかしながら、冒頭から④「Stroke It」までは、彼らしいというか、スムース・アプローチにも通じるバウンシーなもので、正直筆者は苦手である。楽しめるのは⑤「Go Deep」のスロウからではなかろうか。

特に白眉なのは、⑥「Teddy Bear」である。歌いだしからほぼコーラスだけで埋められ、降り注ぐ。この声を浴び、彼らの魅力を存分に感じとれる。徐々に音数が増えるわけだが、その入り方、量が絶妙であり、ナスティな雰囲気づくりがたまらない。

その他、スムース・アプローチのトラックである⑩「One Kiss」、無駄な音を削ぎ落しているような⑪「Chemistry」などのスロウで彼らの声が楽しめる。

-幅広く対応-

アップでは、他の楽曲と雰囲気が異なるポップなタイトル曲⑧「Total Shock」が意外にアリか。こういう楽曲もできるという彼らのアピールなんだろう。そういえばスムース・アプローチもこういうポップな楽曲を作品に入れていたことを思い出させてくれる。

また、⑬「Make A Way」のような緊張感がある楽曲はジェフの得意とするところ。彼がイニシアティブをとっているところが透かして見えるようである。

上記のような変化球にも対応できているところから、この後3枚のアルバムを残していることが理解できる。

-デビュー作は、その方向性も提示する必要があるのだろう-

バウンシーな楽曲も多く、しかしながらスロウで心を離さない。90年代はそういった作品は多くあったなと懐かしむ反面、ディープ3というグループ名を名乗るのであれば、もう少し歌に比重を置いても良かったのかとも思ってしまう。これはスムース・アプローチにも共通するところなので仕方がないかもしれないが…。デビュー作ということを考えると、その可能性を見出すためにはこの方法が最善だったのかもしれない。

(2020.12.07)

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