-歌に比重を置いた21世紀初盤-
ダズバンド(DAZZ BAND)の魅力は“動”と”静“。ファンク色濃厚のものと、スロウを中心とした歌ものである。筆者は彼らについては圧倒的に後者に魅力を感じるわけだが、そのヴォーカルに比重を置いた作品となっている。この辺りは、前々作から復帰したスキップ・マーティン(Sennie “Skip” Martin)の存在が大きいのではないだろうか。
-秀逸なカヴァー-
その証明ともいえるのが、2曲のカヴァ①「You Are My Starship」と④「Love Don't Make No Sence」である。
①は、1976年にノーマン・コナーズ(Norman Connors)がマイケル・ヘンダーソン(Micheal Henderson)を迎えてR&Bチャート4位を記録したヒット曲。原曲にも、ある程度の浮遊感はあるのだが、そこに新しいテクノロジーが加わったように、ますます湿度が高く、浮遊する。雰囲気を壊さずにアップデートし、そこにスキップのセクシーヴォイスがさらにメロディアスに歌い上げる。原曲を超えるカヴァーというのは少ないが、これはその少ない事例ではないだろうか。
④はジョー(JOE)のカヴァー。ダズバンドがジョーを取り上げるというのが、当初は違和感があったのだが、この作品の位置づけ(=ヴォーカルに比重)を明確にしてくれるものとなった。原曲よりもファンク色をのぞかせているところが、彼ららしいと言える。
-これぞ、ダズバンドの魅力-
プロデューサーでもある2人のメンバー、ロバート(ボビー)ハリス(Robert L.Harris)とマーロン・マクレーン(Marlon L.McClain)に加え、カリフォルニア録音らしく、ロマックス(Lomax)[*1]を迎え、3人で仕上げた⑥「Girl You Got A Body」は、①の延長線にあるような浮遊感のあるミディアム。こういった珠玉の逸品を作品に盛り込んでくるところもダズバンドの魅力な理由だが、期待以上の出来栄え。緊張感をストリングスとキーボードで表現しつつ、控えめにアコースティックギターを張り巡らし、安心感を与えてくれる。後半にあるアコースティック・ギターと語りの部分がこの楽曲に優しさをもたらしてくれており、この曲に奥行きをもたらしている。
-ファンク・サイドも用意-
ファンクももちろん忘れてはいない。③「Ain't Nuthin' But A Jam Y'all」では、御大ジョージ・クリントン(George Clinton)が参加。その声も聴かせてくれている。
また、⑤「She's My Lady」では、トニー・トニー・トニー(Tony Toni Toné)のドゥウェイン(D’wayne Wiggins)が参加。思いっきりトニーズ・ファンクとでも言おうか、ラファエル(Raphael Saadiq)ではなく、ドゥウェインの色がはっきり表れたギターが絡むミディアムである。
-失礼いたしました…-
80年代を駆け抜けたファンク・バンドというのは、どうしても現代にアップデートするのが難しいと感じていたのだが、筆者の失礼な発想を大きく超えたこの作品。例えばコン・ファンク・シャン(Con Funk Shun)などの21世紀盤も聴くべきであると思い知らされた。ベテラン組の逆襲があっても、当然なのかもしれない。
(2021.01.03)