-メロディー・メイカー-
クリスの魅力はそのメロディ・センスだろう。AORからの影響も見え隠れするところから、ややもすると「ソウルじゃない!」とステレオタイプに言われてしまうかもしれない。その理由も分からなくもない。ただ、そのソウルとポップの微妙なラインを渡り歩くところが彼の魅力だと思っている。ある意味、ベイビーフェイス(Babyface)に近いところがあると言えるのではないだろうか。
-ここが好き!なのです-
そんなクリスが愛妻マージ(Margie)と新レーベル、ゴールド・シティ・レコード(Gold City Records)を設立し、リリースしたソロ2ndが本作である。まずシングル化された①「The First Time」から始まる。同じ年にクリスのプロデュースでデビューした、リズ・ホーグ(Liz Houge)の「Dream Lover」と同様、本領発揮といえる“打ち込みによるキラキラ・スロウ”の世界が展開されている。しかもこの曲のコーラスにリズも参加しており、ますます雰囲気が近似。片方の楽曲が好きなら、間違いなく双方がお気に入りになるだろう。同様にクリスらしさが全開されているのが、奥様のことを歌っている④「Margie」。一聴してクリスの作品と分かってしまうシンセの音が心地良い。こんなベタ甘な詞を、“奥様に捧げる”というところがR&Bの魅力といえるのだろう。
-意識-
ベースラインが印象的な②「Hit On You」は、80年代のグループが歌っていそうなポップなもの。キュリオシティ(Curiosity Killed The Cat)あたりが歌っていそうだ。アイドル向けに作った!?少し売れそうなところを狙った!?など余計なことを考えてしまう。そういう策略を感じるのは、時代を意識した③「In Your Face」だろう。クリス流ニュージャックといえそうな、“ハネ”を強調したグルーヴを感じられる。ヴォーカルをわざと荒々しくしているのだが、クリスの声質には合わない。他のバリトン系のシンガーが歌うとしっくりとハマるような気がする。
-軽めのファンクが良いのでは!?-
後半の⑤「It's Workin'」は、ヴォコーダーを取り入れたライト・ファンク。クリスの場合、ファンクをするならコレくらい軽いテイストのほうが合っていると思う。もう少しだけゴリっとやった⑥「Time Bomb」⑦「Sanctified You」は、正直印象に残っていない。
-どうしても考えてしまいます…-
全てを聴いて感じたのは、やはり「Caravan Of Love」的な楽曲が一番の魅力であるということ。こののち、クリスが送り出すグループ、ブラザーズ・バイ・チョイス(Brothaz By Choice)にカヴァーさせている同曲こそが彼の真骨頂であることを再確認させられた。そういう楽曲を今のアイズレーズ(The Isley Brothers)が演ってくれたら…。どうしてもそう考えてしまうのだが、クリスのソロ作品のサンクス欄に、Isleyと記載はされていない。従兄弟といえど、関係の修復は難しいのだろうか。
(2012.09.02)