1. 『『Easy To Love』
  2. BODY
  3. artist
  4. privatesoulmusic
『Easy To Love』(1990)1990
body-easy_to_love

Review

-流行の音を入れるべきか-

クワイエット・ストームの最中にデビュー。しかもプロデュースはその仕掛け人、マイケル・J・パウエル(Michael J. Powell)。1stのコンテンポラリーな方向性は、音を聴かずとも予測できた。その布陣のまま2ndか、と思った矢先のニュージャック・ブーム。これには本人たちはもちろん、配給先もすっかり戸惑ったことだろう。それが見えてしまうのが、⑨「Somethin' Ain't Right」でのティミー・ギャトリング(Timmy Gatling)の起用。ニュージャックの仕掛け人である彼を起用し数字を稼ぎたい、という考えが明らかだ。ムリヤリ入れた?話題づくり?とも思ってしまえるこの楽曲がシングル・カットされることはなく、ワーナーの思惑通りにはいかなかった。

-前作の流れ-

しかし、他の楽曲では前作を周到した内容となっている。やはりマイケル・J・パウエルがプロデューサーに起用される。その⑧「You're The Reason Why」は、彼の十八番と言える、きちんと整理されたしたセンチメンタル・スロウ・ジャムだ。マイケルはこの1曲だけの参加なのだが、アニタ・ベイカー(Anita Baker)らを手がけたサミー・マッキンニー(Sami McKinney)や、メリッサ・モーガン(Meli'sa Morgan)ヴェスタ(Vesta Williamas)を手がけたアタラー・ゼイン・ジャイルズ(Attala Zane Giles)らが起用され、クワイエットな世界が楽しめる。ふたりがタッグを組んだ表題曲⑤「Easy To Love」では、シンセの音に絶妙にギターのカッティングを挟んだり、ビアノの音を控えめにしつつ存在感を持たせたり、最後に男性Voを絡ませたりと、“アダルトでありながらイヤらしくない”というクワイエットの世界観を表現している。サミーはボディのメンバー、レティシアと共作したスロウ⑦「Love Has To Be」(クリストファー・ウィリアムス(Christopher Williams)がback VOで参加!)をドラマティックなアレンジに仕上げ、またR&Bチャート12位を記録した②「Touch Me Up」にも参加したりと、数曲に力を貸している。

-才女との邂逅-

上記のクワイエットな楽曲だけでは前作と同様になってしまう。そこで彼女たちを次のステージに進めたといえるのが、数曲でその手腕を振るっているアンジェラ・ウィンブッシュ(Angela Winbush)であろう。この選択は大正解だった。アンジェラの才能はもちろんのこと、彼女のプライベートも手伝って、アイズレー・ブラザーズ(The Isley Brothers)③「Footsteps In The Dark」をカヴァした。ロナルド・アイズレー(Ronald Isley)まで参加させた同曲は、R&Bチャート15位まで上昇。その数字以上に完成度の高さを物語っているのは、後世に渡ってクラブでもプレイされているというところだろう。

他でもアンジェラのセンスが際立っている。と続ける流れがたまらない現在でも充分聴けるスロウ④「Love Me, Love Me Not」や、2年後の1992年にアイズレーズが「Morning Love」(『Tracks Of Life』に収録)としてカヴァした⑥「In The Morning」は、ツヤのあるシルキーな雰囲気のミディアムで、この作品にしっくりと馴染んでいる。余談だがこの辺りの音作りを聴いていると、アンジェラとクリス・ジャスパー(Chirs Jasper)の音作りは非常に似ているなぁと感じてしまうのは筆者だけだろうか。

-話題は集中しているが…-

いろいろと記したが、結局世間的にはやはりアンジェラによるに話題が集中しており、他はあまり話題になったことを聞いたことがない。しかし、他の楽曲も充分に楽しめる。「クワイエットはちょっと…」という方にも是非聞いてもらいたい作品だ。

(2012.04.15)

List

TOPへ