-歌えるジャケット-
もしもこのジャケットで歌がヘタだったら!?それはもはや詐欺といえるんじゃないかな。もし、彼のことを知らずに、ジャケ買いをしたヒトがいたとしても、「おぉ!期待通り!!」とうなずいたんじゃないだろうか。それくらいに“オトコ汁”全開の、スリー・フラム・ザ・ソウル(Ⅲ Frum Tha Soul)のバリトン・リード、ビッグ・ジム(BIG JIM)のソロ作品だ。
グループの1stを手がけていたアンジェロ・レイ(Angelo“lo”Ray)がほぼ全編をプロデュース。相性はもちろん抜群だ。
-2つの峠-
まずはミディアムの①「Without Your Love(Come Home)」からスタート。幕開けにふさわしく、ドラマティックに展開していくメロディ。この作品をもっと深く知りたくなる作りこみ。この罠には何人も確実にはまってしまうだろう。
見せ場は2つの山。まずは④「Bang Bang Bang」~⑥「Do You Take (feat. Reba)」。まず④は曲調は単調ながらも、印象的なフレーズを繰り返し、さらに覚えやすいメロディ・ラインで惹きつけれらる。それにつづく⑤「Do You Still Care」は、どちらかというとかわいらしいコーラスにのせるBIG JIMのバリトンがたまらない。そのスロウを堪能したあとの⑥はギターのリフが印象的。アコースティック・ソウル風に行くとみせかけて、しっかりとソウルしているという、ギリギリ感が楽しめる。こういった音作りはトニーズ(Tony Toni Toné)のドゥウェイン( Dwayne Wiggins)が得意とするパターンだ。
そしてもう一つの山は⑨「That'll Be The Day」~⑪「Little Sister」。軽いフィーリングでありながら、確実に古きよきソウルを周到しているミディアムの⑨は、どこかでサンプリングされててもおかしくないトラックだ。女性ボーカルの後ろでささやく主役。体裁は違うけど、ネリー&ケリー(Nelly&Kelly Rowland)の「Dilemma」を思い出してしまった。タイトルトラックの⑩「Commitment」は、まさしく師匠ジェラルド・リヴァート(Gerald Levert)!これは似てる!BIG JIMにはこういったのをどんどんやって欲しい!!
そんな思いに応えてくれるのは、シングルにもなった⑪「Little Sister」だ。この曲が筆者としては白眉である。何度も「You don't have to cry(no more)…」と連呼するところに、アフリカン・アメリカンの方々の優しさを感じる。
-売れはしないんだろうな…-
これだけ濃密な作品は筆者の大好物である、と同時に……マーケット的には厳しいものになるだろう。ジェラルド亡き現在、こういったクラシック・マナーを守り続けるアーティストを応援したいものである。
(2008.12.28)