1. 『1 Of The Girls』
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『1 Of The Girls』(1993)1993
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Review

-ファンク色を強調-

ジェラルド(Gerald Levert)が全面的に手がけた、ガールズ・グループとしては唯一の存在である。レヴァート(Levert)のファンクサイドを、さらにヒップホップ色を強め、とはいえ寄せすぎない。簡単にまとめるとそんな印象の1枚である。制作も当然ながらのオハイオ録音、レヴァート一派で固められている。

-狙ったのはこういった路線なのか-

シングルとしてリリースされた②「Do Da What」を軸とした前半は、そのファンク~ヒップホップ色の濃いソウル。あくまでファンクではなくR&Bという微妙なラインを、妖艶な雰囲気をもつ①「Ain't Giving Up Nothing」で始まる。このニュージャック感は、ただ時代に合わせたものではなく、彼女たちのコーラスの細さを補う一役を担っているものなのだろう。

続く前出のシングルは、メアリー・J・ブライジ(Mary J.Blige)を意識したのかと思わせる、ループを効かせたストリート色の強いもの。同じく③「Talkin' Loud」も同様で、筆者にとっては苦手な路線。個人的にはBPMを落とした④「No Can Do」のほうが断然良いと思ってしまう。途中でエモーションズ(The Emotions)「Best Of My Life」が入ってくるのも、ベタではありながらも素直にニヤッとしてしまう。

-シャイな女の子は演じられている?-

そんな攻めた前半の最後に⑤「Handle With Care」⑥「Sorry Didn't Do It」を配置。ここに安心のトレヴェル(Trevel)印を感じる。透明感のあるは、繊細な空間に彼女たちのコーラスが響いていくような、大切に扱わないと壊れてしまうようなスロウ。先ほどまでヤンチャだった彼女たちが、素直な女の子に戻ったようにおとなしく歌いたげる。
 得意のヴィブラスラップをふんだんに使ったスロウのは、もっと大人の女を演じる。この曲を手がけたのはジェラルドと、レヴァートを支えるキーボーディスト、ロバート・カニンガム(Robert Cunningham)。キーボードを操る彼らしく、鍵盤の似合う楽曲になっている。

-レヴァートを支えるいつものメンバー-

後半のスタートといえる⑦「Gotta Go」は、一聴して誰が関わったのかがすぐわかるかわいらしいミディアム。ルード・ボーイズ(Rude Boys)が、そのまま歌っても良いようなこの曲は、ジョー・リトル(Joe Little Ⅲ)によるものである。これは彼女たちに合わせたというわけではなく、彼に頼めば彼女たちにフィットする楽曲ができあがるだろうと、ジェラルドが算出したのではないだろうか。

そんなほこっりとした楽曲の後は、緊張感のある⑧「When We Kiss」。途中に入るサックス[*1]の音色にこころを奪われてしまうのだが、このあたりに都会的な洗練された味付けを施すのは、いかにもエドウィン(Edwin Nicholas)らしい。

-ニュージャック末期の香り-

ベタ甘なスロウの⑨「Giving The Best Of My Love」に続く⑩「Will You Be Mine」は、ニュージャック末期を感じるニュージャックスウィングによるスロウ。コーラスの“Will You Be Mine~”の部分など、ロナルド・アイズレー(Ronald Isley)が歌っていそうなアダルト感たっぷりの仕上がりである。キース・スウェット(Keith Sweat)が好きな人にはたまらないのではないだろうか。

最後は、思いっきりニュージャックな⑪「I Don't Want Your Man」メン・アット・ラージ(Men At Large)の2人が楽曲制作とコーラスに参加している。サビのキャッチ―さ、から言うならば、むしろこの楽曲がシングルなっていてもおかしくない。時代的な配慮なのはわからないが、グループを、彼女たちらしさを非常に感じ取れる楽曲である。でも デヴィット・L・トリヴァー(David L.Tollive)のラップは要らなかったなぁとも思ってしまった。

(2021.04.18)

 [*1]この作品にはサックスのクレジットが一切無く、だれが吹いているのかは不明。とってもジェラルド・アルブライト(Gerald Albright)な感じで好感が持てる。

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