-実力派-
どうしてもジョニー・ギル(Johnny Gill)の兄弟が…という話になってしまうⅡ・D・エクストリーム(ⅡD Extreme)であるが、そのトピックだけで取り上げられるのには不満である。90年代に生まれては消えていった数多いグループのなかでも屈指の実力派と言える。
語りからコーラスに入る①「Prelude(Just Understand)」(実は⑬「Become As One」のコーラス部分)の雰囲気から、その“ウタヂカラ”への期待を膨らまさせてくれる。そうなるとやはりスロウを期待せずにはいられない。
-優等生なのか!?-
まずは優等生系から確認。三連系のスロウ④「If I Knew Then (What I Know Now)」は同年に発売されたジョニー・ギル『Let's Get The Mood Right』に収録されていてもおかしくない。ラフェイス(LaFace)やボーイズⅡメン(Boyz Ⅱ Men)が見え隠れしてしまうつくりだ。90年代、R&Bが隆盛を極めていたことを思い出させてくれる…(現在のシーンを考えるとちょっと淋しい…)。同様の路線は⑥「Love You Too Much」、⑫「Seasons(Of Love)」。これらもサビが力強い。TAKE6のような⑬はとにかく優しく、やさしく…。
これだけ聴いてると、つまらなく感じてしまうかもしれない。しかし、もちろんそれだけでは終わらない。
-こちらのほうがキキゴタエあり-
それらよりもストリート感があるもののほうが個人的にはお気に入り。ウェット感の強い③「You Can Have My Love」は、シンプルなベースラインに、これでもかとコーラスを盛ってくる。⑤「Farewell...Love, D’Extra」はインタールードでありながら、もっと聴かせて欲しいと思わせる名スロウ。ピアノのイントロに絡む声、2コーラス目以降のドラマティックな音作り…。ドゥルー・ヒル(Dru Hill)が1st『Dru Hill』でやっていたことを思いださてくれる。コーラスの重ね塗りが、何層にもなっている。
日本人が好みそうなメロディ・ラインの⑨「Sticks And Stones」は、男性から女性へ“いかないでくれ”と嘆願する古典。こちらもサビのコーラスワークが美しい。ブリッジ後の転調は、予想できる展開でありながら、やられてしまう。
-アップも大丈夫!-
スロウ以外では、ライト・ファンクを用意。⑦「Lyin’ Here Thinkin’」も良いのだが、リヴァート(Levert)好きが黙っていないのは、⑪「If Push Comes To Shove」に違いない。チャカポコ・ファンクは、ちょっと時代を感じるのだが、それは狙いであろう。
-枕詞は不要-
聴く前に七光り的なイメージが先行してしまうのだが、どうか誤解しないで欲しい。繰り返してしまうが、彼らは、“歌える実力派”だと断言したい。
(2011.08.21)