-発売年を確認する-
一聴して、“80年代中~後期か。しかし音使いは90年代になるのか”と思っていた。発売年月を確認すると1994年。ニュージャック・スウィングが落ち着き、ボーイズⅡメン(BoyzⅡMen)をはじめとしたコーラス・グループが隆盛を極めていた時代である。アリーヤ(Aaliyah)やTLCも登場し始めた…。その情報を知ると、デュオという形態も含めて、お世辞にも時代にフィットしていた作品とは言い難い。それゆえに、セールス的には成功とはいかなかった…。
しかし、その内容は時流とは別物。ウタゴコロを大事にするリスナーにはたまらない1枚となっている。流行りを追わなかったことが、こうして21世紀にも聴きたい作品になっているのだろう。
-メリットを最大に活かす-
キキドコロは、やはり男女混声デュオというメリットを活かしたスロウ。出だしのメロディアスなピアノと重なるシンセの音が、夜明けを演出している①「Slow」。ビショップ(Calvin “K.B.” Bishop)の語りとチープな感じのベース音が意外と気持ち良い。
続く②「Let Me Touch You」は人気の1曲。サビまでの静かな雰囲気はダンディな男を演じている様だ。ボコーダー風なサビが記憶に残る③「Give It To You」。これまた打ち込み音がチープだが、これまたその方が合っているように感じてしまうから不思議だ。
デュオということを存分に活かした優しい④「Someone Is Me」、ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ(Roberta Flack & Donny Hathaway)のカヴァ⑤「The Closer I Get To You」と安心して続くスロウを楽しむことが可能だ。
サビで温かい雰囲気に一気に包み込まれるのは⑫「Just When」。これを手がけたのはヴィンセント・ハーバート(Vincent Herbert)。これも男女の声の溶け込み具合が絶妙である。
-今でも聴けるアップ-
あまり取り上げられないミディアム~アップも紹介したい。ドラマティックな展開を見せてくれる⑥「Show Me The Way」やホール&オーツ(Daryl Hall & John Oates)でおなじみ⑩「One On One」は、メロディも分かりやすく、タイムレス。⑦「U Keep Givin It」(間奏のラガっぽいラップは不要だと…)や、シングルとなった⑪「You Are The Best」などは、もろにニュー・ジャック調ではあるものの、今でも充分聴くことができる。
-作品群として愉しむ-
ついつい飛ばしてしまう楽曲も無く、アルバムを通して楽しめる。やっぱりこういう楽しみ方(アルバムを通して聴く)が、音を楽しむ、正しい方法だと改めて感じたところである。
(2010.07.27)