-苦手な方面へ行ってしまうのか-
1stからのシングル「No More」。R&Bチャートに32週もランキングされたヒット曲だ。ラフ・エンズ(Ruff Endz)のリスナーも恐らくそのイメージを強く持っているだろう。しかもダンテ“チー”ジョーダン(Dante “Chi” Jordan)がもともとダンサーだったことを考えると、そっち方面に強いと考えるのはごく自然の流れである。さらに、このアルバムからのリードシングルが④「Cash, Money, Cars, Clothes」。やはりヒップホップ・オリエンテッドなのか…。正直、筆者の苦手系の作りだった。
-うれしい誤算-
しかし、アルバムの頭から3曲をスロウでまとめられ、ちょっと肩透かしを喰らった。筆者には嬉しい誤算である。
「俺達は元々バラッドに強いタイプのグループで、ファーストアルバムでも力を入れたつもりなんだけど、何しろ“No More”のインパクトが強くてそれが伝わらなかった」(「bmr」2002.6)
と本人たちが語っていることから、こういう方向性をやりたかったんだろうなと考えさせられた。
-メンバーも楽曲を手がける-
そんな意気込みが伝わってくるのは冒頭の①「Someone To Love You」だ。生ギターの音が心地よく、さらにリズムもあるミディアム。トニーズ(Tony Toni Toné)あたりがやりそうなこの世界観。これは他のどの曲よりもクオリティが高い。手がけたのは、デスティニーズ・チャイルド(Destiny's Child)やジニュワイン(Ginuwine)などを手掛けたコリー・ルーニー(Cory Rooney)。こんな温度の曲もやりこなすんだと改めて驚かされた。
-その他の楽曲も小粒揃い-
その他デヴィッド自身が手がけた②「Will You Be Mine」、キャラクターズ(The Characters)が手がけたK-Ci&ジョジョ(K-Ci&Jojo)路線の③「You」、震えるギターが哀愁を演出する⑧「Sure Thing」、優等生バラード⑫「You Mean The World To Me」、⑭「Look To The Hills」などのスロウがキキドコロと言えるだろう。(但し、重複するが①ほどのパワーはない。①の次点を選ぶなら⑧)
-無理やり感-
期待されたアップだが…。う~ん。期待はずれ。デヴィッドが歌うなら、もう少しゴスペルよりで良いのではないだろうか。無理やりヒップホップ方面へ向かう必要はないと思ってしまうのだが…。
(2010.11.23)