-転校生は優等生なのか!?-
テディ・ライリー(Teddy Riley)の大技により大きくメンバー・チェンジが行われた後の2nd。5人中3人がリフ(Riff)のメンバーになったことで、よりポップな方向性を目指してしまうかと危惧してしまった方も多いと予想されるが、その心配が取り越し苦労ということになっている。そもそもリフはヒットしたのが優等生バラードだったためにそのような印象を抱きがちだが、彼らは2ndで大きく成長していた。多くのグループがイメージ・チェンジに失敗するパターンである“ストリートへのベクトル”を巧く乗りこなしていたのだ。それゆえ、彼らが貧弱でないことは、そこで証明されているといって良い。
-テディがいなくても-
テディがプロデュースしているのは1曲と期待を裏切っているのだが、他の参加陣が豪華。フレッド・ジャーキンス(Fred Jarkins)、ジョー(Joe Thomas)、ゴードン・チェンバース(Gordon Chambers)にテディ・ビショップ(Teddy Bishop)、ヴィンセント・ハーバート(Vincent Harbert)などなど、テディ・ライリーが居なくても充分安心できる名前がズラリと並んでいる。
-アップで骨太感を出す-
力を入れたのは⑤「Do You Feel Me? (...Freak You)」。新生メン・オブ・ビジョン(Men Of Vizion)第1弾に相応しいアップナンバーであり、ラップを効果的に挟んでストリート色を強調。フレッド・ジャーキンスらしい“力強いメロディアス”なダンスチューンに仕上がっている。リミックスも含めて3バージョンが収録されているが、オリジナルの⑤か、⑯「Do You Feel Me? (...Freak You)-extended version(w/o rap)-」を推す。
-そして聴かせる-
残りはほとんどミディアム~スロウであり、彼らの力量がしっかり見える作りになっている。1分に満たないインタールードの③「Hiding Place (Interlude)」でさえ、しっかり作ってくれている。そのなかで彼らの魅力を最大級に引き出しているのは⑦「All Night Long」だろう。ライブ感を重要視し、さらにアイズレーズ(The Isley Brothers)への憧憬(そのまま「Don't Say Good-Night」を歌うのもアリだったと思う)を表現しつつ、吼える。ヴォーカル・グループの醍醐味を楽しませてくれる。
アルバムの中で最も良い楽曲と問われれば、⑥「Break Me Off (Love Theme From Trippin')」を挙げてしまう。これはジョーの才能によるところが大きいとは思うが、控えめに歌い上げる彼らの歌い方の工夫も見られ、さらに心に入り込む名曲に仕上がった。この楽曲だけを何度もリピートして聴いてしまうほどお気に入りの1曲。是非本人にセルフ・カヴァーをお願いしたいものだ。
-しなやかさ-
ゴードン・チェンバースの⑨「If This Is Love Again」や⑫「Right Thing At The Wrong Time」などは、メロディ重視のスロウ。このあたりは元リフの3人が得意とするところではないだろうか。特に⑫はゴリゴリ歌い倒さず、かわいらしく語り掛けるところなどは、彼らの自在性に感心させられる。
-グループで歌うということ-
その直後の⑬「Miracles」は、グループで歌うということを良く理解しているイントロ(Intro)のケニー・グリーン(Kenny“G-Love”Greene)が手がけた切ないスロウ。熱く吼えるリードに応えるコーラス・ワーク。続く⑭「Yes」も同様なのだが、これぞグループに求められているものではないだろうか。この2曲もまたハイライトといえるだろう。
-魅かれるジャケ-
それにしても素晴らしいジャケット。輸入盤はマイクと手だけになるのだが、どちらも捨てがたい。もし知らないグループであっても、まちがいなくジャケ買いしていただろう。
(2012.11.12)