-原点回帰-
『Back To Basics』、基本への回帰…。メイズ(Maze featuring Frankie Beverly)ほどこのタイトルのテーマを、どのアルバムでも実践しているバンドはないんじゃないのだろうか。というよりも、彼らにとってはやりたいことをやり続けているだけなんだろうけど…。私見だが、このタイトルにしたのは、当時のブラック・ミュージック・シーンへの提言だったのではないだろうかと思っている。93年といえば、ニュー・ジャック・スウィング~グラウンド・ビートの波が一段落し、いよいよヒップ・ホップとR&Bの合流が始まるころである。メロディの重要性を再認識し、ソウルについて再考しては!?という、フランキーからの提言だったんじゃないかなと考えてしまう。ともあれ、相変らずの良作である。
-メイズらしさ-
出だし①「Nobody Knows What You Feel Inside」から、78年の2nd『Golden Time Of Day』収録の「Song For My Mother」や、79年の3rd『Inspiration』収録の「Call On Me」を彷彿させる得意のパターン!あ~、メイズだ…。そう、メイズなのである。
では、メイズとは?やはり、故郷フィリーと、マーヴィン・ゲイの影響。なかでも後者の影響は絶大。だから、“人間くささ”や“都会の情景”が連想される。今回も、“人間くささ”サイドでは、⑥「In Time」で粛々と人類や戦争に対して語りかける。これが一人ひとり、個々に伝わることを願うばかりだ。また、ミディアム・スローの③「The Morning After」は、今までのメイズ作品の中で一番都会の似合う曲に仕上がっている。これが地味ながらたまらなくカッコイイ。
-爽やかでもしっかりとソウル-
⑧「Don't Wanna Lose Your Love」は、ヤサ男のうた。こういうテーマだとどうしてもエロくなりがちだが、フランキーの手にかかると爽やかに…。“爽やか”というと、メイズかブライアン・マックナイト(Brian McKnight)くらいしか想像できない。これがポップにより過ぎていると捉える向きもあるのだろうが、彼らのエッセンス・フェスでのライブの映像を見る限り、ソウルを感じずにはいられない。
-こうなったらいつまででも待ちますよ!-
ライヴは相変らず精力的にやっている模様。ニューアルバムのうわさも聴いていたが、結局リリースされずじまい。21世紀のメイズ。変わらない姿がそこにあるだろう。
(2005.11.5/2011.04.29)