－セルフ・タイトル－

5枚目にしてセルフ・タイトルを付けた。それゆえに自信作だったのだろう。その自信が確信になるほどの素晴らしい出来である。

「I Want Her」のデビューを考えると、誰がこんな良質なバラードをつくるアーティストになると予想しただろうか。1stアルバムに付けたタイトルは、シングルの「I Want Her」ではなく『Make It Last Forever』ときた（新人だからヒット曲をアルバム・タイトルにし、販売を伸ばす戦略を考えると、ヒット・デビュー・シングル＝アルバム・タイトルと安易になりそうなもの）。完成度の高いこのバラードをタイトルとしたキースはきっと、“オレはもっと歌を聴かせるR&Bクリエイターだぜ”とでも言いたかったのではないだろうか？そのあたりを汲み取らないと、そんな予想は出来ないはずだ。

－スロウ－

そんなキースが2nd『I'll Give All My Love To You』以降に徐々に確立したスロウの世界を結集させたのが本作。大ヒットした ① 「Twisted」 では、彼がのちにプロデュースをすることになるガールズ・グループカット・クロース(Kut Klose)のアシーナ(Athna)が絶妙に絡んでくるミディアム・スロウ。ニュ・ージャック・スロウの“美味しい所取り”というカンジだ。②「Funky Dope Lovin'」ではおなじみジェラルド・レヴァート(Gerald Levert)のほかにアーロン・ホール(Aaron Hall)まで参加。ボトムの利いたヴォーカル合戦がくりひろげられる。⑤「Just A Touch」⑥ 「Freak With Me」でダンスの香りを残しながら、⑦「Nature's Rising (Interlude)」で一度区切りを。そして⑧「Come With Me」でのメエメエ声。ロナルド・アイズレー(Ronald Isley)との夢のエロ対決である…。これにはひれ伏すしかないであろう…。それ以下の曲もはまさにR-18指定である。

－商業的にも実績を残す－

このアルバムからは、①がR&Bチャート2位、⑪「Nobody」が3位を記録。キースがやりたかったことを信じてやってきた結果がココに実を結んだ。

(2005.11.03)