-短編映画-
デイヴ・ホリスター(Dave Hollister)『Chicago'85...the movie』は、作品を1つの映画に見立てた構成。マイク・シティ(Mike City)作「One Woman Man」を軸にソウルというフィルムに焼き付けた名盤であった。その作風を連想させてくれるのが、この『Ghetto Classics』だ。プロデュースにあたったのは、育ての親、ケイ・ジー(KayGee)(①③⑤⑥)、元ブラック・ストリート(Blackstreet)・エリック・ウィリアムス(Eric Williams)(⑧~⑪)のほか、スコット・ストーチ(Scott Storch)(④)、テレンス・アブニー(Terence Abney)(⑤⑥)、コ・スターズ(Co-Stars)(⑦)などメロディに自信あり!のメンバーが並んでいる。
-ソウル・クラシック-
古い映画を連想させてくれるのは、ジャヒーム自身が恐らく幼い頃に歌ったであろう楽曲たちのサンプリングによるものだろう。タイトルに“Classics”と入れたのは、過去のソウル・“クラシック”をブレンドしているという意味も含んでいるハズだ。①「Chosen One」はウィリー・ハッチ(Willie Hutch)の「I Choose You」を、②「Everytime I Think About Her」では、ロスト・ジェネレーション(Lost Generation)の「I Sly,Slick & The Wicked」を、③「Daddy Thing」では、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツ(Harold Melvin & the Blue Notes)の「To Be True」を使用。この3曲だけでもソウル・クラシックをふんだんに用いている。ネタだけが良い様な書き方をしてしまったが、もちろんそれを流用しつつ新しい魂を入れているところが肝。これだけ味付けが出来るのは、ジャヒームの声そのものなのだろう。映画はここまでで序盤。2人が出会い、お互いを想うように…。
-流れを乱さないオリジナル-
その2人に転機が!少し距離を置くようになる…。そんなワンシーンを思い浮かべそうな④「Forgetful」⑤「Like A DJ」は純粋にオリジナル。サンプリングに頼ることなく、ややダークに迫る。⑤は少し電子音を入れているところからか、この作品の中では異色!?しかしながらこの2曲が作風を壊しているわけではないのでご安心を。
-心臓部はこの4曲-
再びネタ使い。⑥「Fiend」ではデルフォニクス(Delfonics)「I'm Sorry」、⑦「I Ain't Never」ではマリリン・マックー&ビリー・デイヴィス.Jr(Marilyn McCoo & Billy Davis Jr.)の「Stay With Me」を、⑧「125th」はモーメンツ(The Moments)の「Not On The Outside」をサンプリング。特に⑥の出だしにヒップホップ・エッセンスを散りばめるところがジャヒームらしさ。これぞゲットーとでも言おうか。この温故知新なところが真骨頂といえるのではないだろうか。また、それに続く⑨「Masterpiece」の切な過ぎるギターのリフときたら…。この4曲の流れが作品の心臓部。距離を置いた2人が再びともに歩み出していく。
-エンディング-
ゆっくり語りかけるように言葉を置いていく⑪「Come Over」では、吼え過ぎないジャヒームの魅力を見せてくれる。ささやくように、丁寧に、ただただ”Come over…”と続けていく。映画もエンディング。2人がお互いに心から語り合う…。(歌詞の内容はチョット違うんですが…) 日本盤ではエンディング・ロール付、とでも言うべきか。⑫「Everytime I Think About Her」で②が再演されている。
-ゲットー・クラシック-
セールス的には前2作を下回る結果となってしまった。しかし、これについては、前作から大きくブランクがあったことと、ダウンロード文化が定着し、CDそのものが売れない時代に入った、という2点で説明がつく。作品の内容で条件は充たしているだろうが、この環境でもゴールド・ディスクを獲得しているという事実も含めて、「Ghetto Classics」と言えるのかもしれない。
(2011.01.04)