-釈然としない評価-
フレディ・ジャクソンというと、どうしても釈然としないところがある。デビュー曲「Rock Me Tonight」があれだけの大ヒットを記録したため、自分のペースで作品を発表していけなかったんだろうと。それがゆえ?にセールス的には右下がり…。日本人からみると一発屋と思われる可能性が高い…。おまけにワンパターンだとか、起伏が乏しくつまらないとかの酷評…。良作もあるのになんだかな…。そんなフレディの、特に作品として聴いてもらいたいのがこの『Private Party』である。
-分かり合える旧来のコンビネーション-
制作人は毎度おなじみバリー・J・イーストモンド(Barry Eastmond)。ほとんどの楽曲を提供し、安定した質感を整えてくれている。イーストモンドとフレディのコンビによるものはミディアムの⑥「I Tried My Best」で楽しめる。80年代フレイヴァというか、フレディのデビュー当時の情景を思い出してしまいそうになる、どことなく懐かしいメロディーライン。その頃が好きな人にはたまらない音である。
そして、バリーはフレディのことをよく理解してるんだろうな、と感じるのが⑧「Lay Your Love On Me」。同じスロウだが⑩「Once In A While」と聴き比べて欲しい。正直なところ、⑩はいい曲なんだけど、あまりソウル感を感じられない。⑧もメロディー的にはポップなのだが、しっかりソウルとして聴ける。このあたりが、フレディを“ただの一発屋”と呼ばせたくないというバリーの心意気ではないだろうか。
-さすがのリヴァート印-
そんなわけで、今回もバリーが主体となって作り上げたアルバム。しかし、外部プロデューサーを招いても、しっくりきているものが存在する。 それが②「Rub Up Against You」。ジェラルド・リヴァート&エドウィン・ニコラス(Gerald Levert & Edwin Nicholas)のご両人の作品だ。このはまり具合は、数あるジェラルドの仕事の中でも秀逸なものだ。フレディとジェラルドのバックコーラスが混じりあうイントロからすでにグイグイ惹き込まれる。2人の低音が重なり合うことで、さらに倍の重厚感を味わえる。この曲は、当時の流行に対するフレディの回答であるような気がしてならない。ちょっとエロ過ぎなのはご愛嬌。
-二束のわらじとは思えない仕上がり-
それからバリーと組んでゴードン・チェンバース(Gordon Chambers)の名前が!おそらく作家デビューしたてのころで、エッセンス誌の編集者と2足のわらじをはいていたころ。片手間とは思えないほどの活躍ぶりで、①「Private Party」④「Thank You, (I Want To)」 ⑦「No One Else」 の3曲を共作している。そのなかでも④はもっともチェンバース色の濃い、良い意味での憂いを伴ったもの。それでありながらフレディに一番しっくりきてるような流麗な美メロ。打ち込みの音作りはベイビーフェイス(Babyface)が作ったと言われても疑えない雰囲気だ。
-次の作品までムーブメントの中でリリースできていたら…-
さて、95年に発表したこのアルバムを最後にメジャーから去ることになったフレディ。男性ソロシンガーには追い風だった95~96年だっただけにセールスも期待できると思ったのであるが・・・。大人のための音楽は売れづらくなってしまったの影響がここにもみることができる。
(2006.10.22)