-ニュー・クラシック・ソウル-
ディアンジェロ(D’angelo)、マックスウェル(Maxwell)、トニーリッチ(Tony Rich)…とにかくいわれたニュー・クラシック・ソウル。とらえどころのない表現は、現代では退化してしまい、ほぼ使われず。否定派まで現れる言葉である(個人的には肯定派!)。もともと、ソロの1stリリース時のうたい文句といわれているが、“生音のグルーヴを大切にし、往年のソウルに対してのリスペクトを表したR&B”だと、個人的には思っている。そのムーブメントを振り返るときに、必ず触れられるのがこのアルバムだ。
発表は96年だが、95年には出来上がっていたという。つまりは、ニュー・クラシック・ソウルがもてはやされる前に完成していて、決して流行りに便乗してレコーディングしたわけではない。リリースまでの経緯は、バイオを参照して欲しいが、実力あるものが勝ち上がっていくのである。どんな世界も厳しいということだろう。
-核となる4曲の存在感-
日本版のライナーに、KCさん(松尾潔さん)が、
“このアルバムの核となる曲は、①「True To Myself」②「I'll Be There」⑧「Spiritual Thang」⑬「Let's Stay Together」である”
と記しているが、私もまさにその通りだと思う。それくらい、他と比べて完成度が高い。そのなかでも、②「I'll Be There」はタバコのCMに当時使われていたが、アーバンでお洒落な感覚がすごくハマっていたのを思い出す。⑧「Spiritual Thang」のギターの入り方、⑬「Let's Stay Together」での絶妙なザラツキ具合(どうしてもディアンジェロと比較しますね、この曲!)など、生音のカッコよさが際立っている。個人的には⑬の別バージョン、④「Let's Stay Together(Midnight Mix)」のエロさ加減をお勧めしたい。
その他も秀作が続々。ロジャー・トラウトマン(Roger Troutman)がプロデュースした、スライ(Sly & The Family Stone)のカヴァー③「If You Want Me To Stay」のファンクへの敬意の払い方をみると、このヒトは70年代を愛しているんだろうなぁとニヤけてしまう。また、“アレンジは柿崎洋一郎なのでは!?”と思ってしまう音使いのわかりやすいバラード⑩「All In The Game」など、全体を通して充分に楽しめる。
-ソウル度数を計るなら-
この1stの成功を受け、2ndは大ヒット。しかし、ややAOR感が増してしまった2ndよりも、1stのほうが明確にソウル感は上。個人的にはこちらが上!だと思っている。よく聴いてしまうのも1stのほうが断然多くなるのは、私だけではないはずだ。
(2005.11.23/2011.03.23)