-ソウルとヒップホップの間を浮遊する-
デトロイト=モータウンといえば、どうしてもソウルのイメージ。90年代以降も、この地からアリーヤ(Aaliyah)やマリオ・ワイナンズ(Mario Winans)らを輩出しており、歌物強しの構図は今もなお残る。かつてはヒップホップ不毛の地などと呼ばれていたが、本作の主役ドゥウェレと活動していたスラム・ヴィレッジ(Slum Village)らにより、ようやくヒップホップが広まり始めたのは90年代後半である。
そんな、ヒップホップとソウルの間を自由に泳ぐドゥウェレのデビュー作。フィリーの香りがプンプン立ち込めるネオソウルに仕上がった。本人も
「バハマディア(Bahamadia)と一緒に“フィラデルフィア”って曲をやってたこともあって、フィリー出身と勘違いされる」
と語っており、アルバム前半を聴けば、「フィリー出身!?」と疑いたくなるのは当然だ。ミュージック(Musiq Soulchild)の『Soulstar』のような、全体として楽しめる一枚だ。
-影響を受けた音楽を素直に反映させる-
②「Truth」のイントロは、ブラックストリート(Blackstreet)の2nd『Another Level』での入り方を彷彿させるミディアム。バックで聴こえるフェンダー・ローズは、リオン・ウェア(Leon Ware)のような雰囲気をかもし出す。③「Find A Way」はマックスウェル(Maxwell)の2nd『Embria』のよう。これはDJ・クイック(DJ Quik)の片腕とも言われたG-1によるものだ。
上記2曲による鋭角的なイメージを、④「Twuneanunda」で和らげてくれる。このタイトルは“20歳未満”の意だが、詩は別として落ち着きまくりの1っ曲である。そしてトラックは再び⑤「A.N.G.E.L(Interlude)」で攻撃態勢に。ここまでが、空間を自由に浮遊してると感じる、キキどころだと思う。
⑨「Money Don't Mean A Thing」はイントロのギターから、もうルーシーパール(Lucy Pearl)しまくり。それもそのはず、手がけたのは、ラファエル・サディーク(Raphael Saadiq)の腹心、ジェイク&ザ・ファットマン(Jake And The Fatman)。カッコよいリフを際立たせるところはさすが。⑩「Hold On」はエリック・ロバーソン(Eric Roberson)のお仕事。これまた彼の色が出まくった、フィリー・グルーヴである。また、ボーナス・トラック扱いの⑯「Let Your Hair Down」は聴きやすいミディアム。浮遊感とポップ色が見事に融合されている。
-コピー・コントロール-
そういえば、この輸入版は、正しい録音方法でもMDなどに落とせなかった!!メアリー・メアリーの新譜なんか、再生するとオーディオが故障する可能性があるから回収になっているとも聞く。こういったコピー・コントロールは早く廃止してもらいたいものだ。
(2006.01.08 )