-ニュー・ジャックを歌うためではなく-
トゥデイ(Today)は、登場の仕方からニュージャックを歌うために現れたという印象が強い。やっぱりテディ・ライリー(Teddy Riley)とジーン・グリフィン(Gene Griffin)がタッグを組んでいたのだから、それは仕方が無い。しかし、そのリード・シンガーであったビッグ・バブ(Big Bub)は、その流行の音とともに消える存在ではなかった。ソロとして再出発を図った1stである。
まずは全体の構成。前半を“head bangin”(アップ)、後半を“hip swingin”(スロウ)とし、はっきりさせたところが効果的に感じる。
-古くても楽しめるアップ-
前半は1stシングルにもなった②「I Don't Mind」を中心に、ニュージャック。フロア向けの曲が並ぶ。③「I Want U 4 Me」、④「Touch Me」の2曲は、冒頭のラップに萎えそうになってしまうが、聴き進めると自然と体が動き出しそうになるから不思議だ。まんまガイ(Guy)といった感じの⑤「Hittin Skinz」なんかは、そのまま過ぎることに潔さを感じるほどである。
と、ここまではグループ時代とそんなに大差を感じない。しかし後半の怒涛の攻めには恐れ入る。
-充実のスロウ群-
こちらもシングルになった⑦「Tellin' Me Stories」からスタート。切ないスロウが得意のハーブ・ミドルトン(Herb Middleton)らしいメロディライン、そしてバブの低音ヴォイス、決して前に出てこないピアノの旋律…。それぞれがうまく重なりあっている。もうちょっとバブが吼えても良かったかなとも、個人的には思ってしまう。ミドルトンは⑪「24/7 (Good Lovin')」も提供。このスロウサイドのイニシアチヴを握った。(ちなみに⑦の次にカットされたシングルは⑪)。
そのミドルトンの世界観を維持したまま、ダレン・ライティー(Darren Lighty)が手がけた⑧「Work It Out」へ。彼はこの後、ルーサー・ヴァンドロス(Luther Vandross)やジャヒーム(Jaheim)、ネクスト(Next)などの仕事でその力を発揮するわけだが、このころからこういった優しいメロディを提供している。
リネイ&アンジェラ(Rene & Angela)のような⑨「Take My Heart」は、良い意味で期待を裏切ってくれるメロディラインが心地よい。ケイス(Case)のアルバムにコーラスで参加しているデヴィッド・グッピー(David Guppy)が手がける⑩「Simon Sez」は、いかにもニュージャック期のスロウらしい音使い。キース・スウェット(Keith Sweat)あたりが好きな人ならすぐに食いつく曲だろう。
-横山輝一の2作品をおすすめ-
この時期の作品にありがちな、「後半のスロウだけでも…」といつもなら書いてしまうところだが、このアルバムはアップもしっかり楽しめる。ちなみにこのアップが好きな人は、横山輝一(!)氏のアルバム『JACK』『HIT ME』をお勧めしたい。きっと気に入ってもらえるハズ…だと思う。
(2010.05.30)