-マイペースな音作り-
この作品がリリースされた89年は、テディー・ライリー(Teddy Riley)が仕掛けた、いわゆるニュー・ジャック・スウィングが全盛。ダンス&ソウル界では、この跳ねるビートを、どのアーティストにも歌わせるような風潮だった。そんな中、その影響は隠せないとしても、マイペースな音作りで作品を届けてくれた。
-ヒップホップ・ソウルの原型!?-
アルバムの構成は1st『Sharp』に続いて、前半ファンク~後半スロウというもの。それ自体は変わらないが、打ち込みの音がよりアップデートされている。①「It's The Real Thing」は、ヒップ・ホップ・ソウルの原型などと称されることもあるヒット曲であり、ビルボードチャート2位までのぼりつめている。歌い方、サビのコーラスなど、確かにヒップホップ・ソウルとも思えるが、筆者は今までのアンジェラが作ってきたファンクの延長線上にあるのではないだろうかと考えている。
-アーバン色濃厚-
④「Lay Your Troubles Down」以下のスロウ群は、今聴いても色あせない。④でのロナルド(Ronald Isley)とのデュエットや、三角関係を歌った⑦「Menage A Trois」のイントロなどを聴いていると、アイズレー(The Isley Brothers)のアルバムに手を伸ばしたくなるのも仕方ないところ。
⑤「Precious」では、一聴してすぐにジェラルド・アルブライト(Gerald Albright)だとわかるSAXの音色が、アーバン色をより濃く演出する。近年はジャンルとしてアーバン(Urban)という枠が確立しているが、本当の意味でのアーバンってこういう音じゃないかと思ってしまう。
ステファニー・ミルズ(Stephanie Mills)が86年3月にブラック・チャート1位を獲得した⑧「I've Learned To Respect(The Power Of Love)」のセルフカヴァーは、幼少からゴスペルに親しんできたアンジェラの姿がうかがえるバラードだ。
-新作が無理ならば…-
このアルバムが、現在の打ち込み音でアップデートされると面白いのだが…。新譜が聴けないなら、せめてそれだけでも切望している。
(2005.11.02)