1. 『Groove On』
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『Groove On』(1994)1994

Review

-はじめて知るジェラルド-

個人的な話になるが、ジェラルドの作品を初めて聴いたのはこのアルバムだった。会社の先輩とR&Bの話になり借りたのだったが、「早くリヴァート(Levert)を聴きたい!」と思っていた矢先だったことを思い出す。社会人1年目。99年の夏であった。そんな事情からタイムリーで聴いたわけではないし、時流でもなかったわけであるが、とにかく衝撃を受けたことを今でも思い出す。  

-愛が生まれた瞬間-

その中でも⑩「Same Place,Same Time」には大いにやられた。控えめに思い切りワウるギターの音色とジェラルドの語り、それに絡みつくバリトン・ヴォーカルが、スマートなエロスを醸し出しながらも熱気でダダ洩れする、というアダルトな世界観。まさに筆者が求めているものが詰まった楽曲であり、これ以降巨大化するジェラルドへの愛が生まれた瞬間となった。

-ヒットを狙いに-

そんな筆者の好みとは裏腹に、シングルに選ばれたのは④「I'd Give Anything」デヴィッド・フォスター(David Foster)がプロデュースした、カントリー曲のカヴァである。ホイットニー(Whitney Elizabeth Houston)の「I Will Always Love You」の大ヒットにより、この手のカヴァが増えるわけだが、それを手掛けたデヴィッドがプロデュースしたことへの配慮と、白人層へのヒットを狙ったものだったんだろう。松尾KCさんが執筆されたライナーノートに記述があるのだが、ジェラルドはこの曲をシングルにしたくなかったようだ。それを聴いて、筆者はとても安堵した。デヴィッド・フォスターが嫌いなわけではない(*1)。楽曲が悪いわけでもない。ただ、ジェラルドらしさはあまり感じられない。

-レジェンドへのリスペクト-

上記のこともあり、やはりジェラルドにはソウルを求めたくなる気持ちが昂る。その期待にも充分に応えてくれている。以下の楽曲では、レジェンドたちへのリスペクトに溢れている。

③「Let The Juices Flow」では、アイズレーズ(The Isley Brothers)「For The Love Of You」、⑨「Have Mercy」ではアル・グリーン(Al Green)マーヴィン(Marvin Gaye)が、⑫「Love Street」ではルーサー・ヴァンドロス(Luther Vandross)「A House Is Not A Home」(*2)と、ソウルファンならニヤニヤしてしまう部分がたまらない。

-良い意味で予想が外れる-

いかにもグループのリヴァートとして歌いそうな⑪「Nice & Wet」のようなポップな楽曲もあるのだが、そのポップという意味で驚かされたのは⑥「Someone」である。手掛けたのはキアラ(Kiara)の2人。この情報だけだと、音が軽くなりすぎてしまうのではと危惧してしまったのだが、意外に溶け込んでいる。キアラとしてもアルバムを残しているふたりだが、裏方のほうが良い仕事をしていると言ってしまうのは失礼だろうか。

-言うまでもなく-

エドウィン・ニコラス(Edwin “Tony”Nicholas)とのコンビについては、当然素晴らしい。今回手がけている中では、上記が一番なのだが、タイトルでフレディ・ジャクソン(Freddie Jackson)を思い出す②「Rock Me(All Nite Long)」もお気に入り。いつの時代でも聴ける安心印は、ここにも刻まれている。
(2020.03.28)

[1]大学生の頃はシカゴ(Chicago)の『16』も聴いたりしていた。ソロアルバムももちろん所有しているので、決して否定的でなない。
[2]この楽曲も、元々はバカラック(Burt Bacharach)が作って、ディオンヌ・ワーウィック(Dionne Warwick)歌っているから、黒度は低いかもしれない。しかし、ルーサーが完璧にソウルにしてしまっているところがこの曲と重なって見える部分なのかもしれない。

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