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『Traces Of My Lipstick』(1998)1998
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Review

-残念ながら…-

エクスケイプ(Xscape)の3枚の作品中、世間的には一番評価が低い。1stでみせた勢い、2nd『Off The Hook』での成長を感じさせてくれた後のこの3rdは更にコンテンポラリーにシフト。これが「今までに比べると元気が無い…」ような印象を産んだのだろうか…。しかし、それを大人になった彼女たちの姿と捉えると、非常に完成度の高い作品であり、個人的には大好きな作品である。

-外部のプロデューサー陣を起用-

やはり彼女たちの後見人といえるジャーメイン・デュプリ(Jarmaine Dupri)がプロデュース。2ndシングルとなった②「My Little Secret」(R&Bチャート2位)などをマニュエル・シール(Manuel Seal)とともに提供したりと、相変らず全般的に活躍している。しかし、これまで以上に外部作家にある程度任せ、それをつなぎ合わせるという役目を担っているように感じる。決して手を抜いた訳ではなく、この作品の目指す方向を考えた時に、そうしたほうが良いと判断したのだろうと考えられる。

ファーストシングルに選ばれたのは⑥「The Arms of the One Who Loves You」ダイアン・ウォーレン(Diane Warren)を起用するところから、この作品の方向性が見える。予想通り、トニ・ブラクストン(Toni Braxton)あたりが歌いそうなポップなスロウであり、“エクスケイプが歌う”ということを鑑みた時に、確かに賛否両論ありそうな楽曲である。そんな(意見が二分されそうな)中でもR&Bチャートは4位に持ってくるところが彼女たちの実力なのだろう。

同様の路線を狙った起用と思われるのがベイビーフェイス(Babyface)だろう。前作も参加したダリル・シモンズ(Daryl Simmons)と共に、得意の“ポップになり過ぎないギリギリのライン”でのスロウ、⑧「Your Eyes」を提供している。心温まる優しい音作りは、彼ららしさ全開である。

また、アトランティック・スター(Atlantic Starr)のカヴァーである⑩「Am I Dreamin’」は、キース・スウェット(Keith Sweat)の手がけたグループ、オル・スクール(Ol Skool)との共演。羊先生のコーラスも楽しみのひとつだが、ここでの彼女たちの存在感はさすが。高音が特に気持ちよく聴こえる。

-白眉の1曲は…-

出色の仕上がりを見せているのはジョー(Joe Thomas)の手がけた③「Softest Place On Earth」である。3rdシングルとしてカットされるも、R&Bチャート28位。数字なんか当てにならないと言いたくなるような切ない湿度の高いスロウだ。アコースティック・ギターを全体的にまぶしながら、彼女たちのコーラスを活かす。この頃のジョーは、「All The Things」をはじめ、本当に良い曲を書いていると思う。

-今のところ最新作-

解散をしているのか、していないのか。実はココも不明確ではあるが、長期にわたり活動をしていないのは事実である。キャンディ(Kandi)も一時期は作家として裏方で活動していたが、やはり彼女たちの魅力は“歌うこと”である。個人的には良く比較されただろうTLCよりもコーラスワークは素晴らしいと思っている。女性コーラス・グループが壊滅状態といえる現在に、是非一石を投じてもらいたい。そういえば先ごろSWVも新譜リリース。これを好機にしてもらえないだろうか。

(2012.11.25)

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