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『Quindon』(1996)1996
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Review

-クリス・ストークスの十八番-

少年グループを手掛ければ成功を重ねていたクリス・ストークス(Chris Stokes)であるが、彼が好みそうな甘酸っぱい歌声を持っていたのがこのクインドン(Quindon Tarver)である。

-甘い歌声とは裏腹に-

1996年のリリースであるのだが、作品全体的にはもっとニュージャックよりとでも言おうか。クリスの妹であるスムース(Smooth)の参加もあり、オーストラリアとニュージーランドでチャート入りした①「It’s You That’s On My Mind」は、イントロのベース音、リズムをとっても、数年前の音と言わざるを得ない。全体的にダークな雰囲気を持っているこの楽曲が、果たしてクインドンの声にフィットしているといえるのだろうか。個人的には、スムースの知名度を上げるためにクインドンを利用したように感じてしまった。

この世界観が同様に展開されているのが③「Dream About You」[1]。これはクインドンも共作しているのだが、背伸びが過ぎるような気がしてしまう。

-14歳の世界観-

とはいえ、クリス・ストークスももちろん理解している。②「When It Comes To My Music」でみせる④「Wrap Your Heart Around Mine」のイントロの遮断を考えると、格に据えているのはであることは間違いない。そしてこの楽曲を中心に、スロウ~ミディアムで見せる青春群像の世界が、14歳のクインドンに相応する。

イントロから惹きつけられるは、音数の少ない鍵盤の音にのせて“…girl”と繰り返す。この直球勝負の青臭さに好感が持てる。同様に⑥「I Like」でも“Let’s try to get along girl”と何度も何度も重ねてくる。このスロウ2曲がハイライトと言えるだろう。

-“子どもから大人”という空間を浮遊する-

前述のとおり、ミディアムでも子どもと大人の狭間を彷徨していることが、その音から伝わってくる。

クインドン本人の歌声の影響も大きいのだろうが、ミディアムの⑦「Get Away」⑨「I Wanna Be With You」については、ブラウンストーン(Brownstone)あたりが取り上げても面白いのではないだろうか。彼女たちの1st『From The Bottom Up』に入っていても、全く違和感がないような気がする。コーラスをもっと教会仕様に歌い倒してもらいたいと感じた。

また、電子音が気になる⑩「Anyway」⑫「Can This Be Love」は、当初この音が煩わしいなと感じていたが、聴き進めると逆になくてはならない音に。どちらも計算されていることに気づかされる。

-30代の歌声での勝負を!-

Bioにも記載しているが、様々なことがあったのだろう。しかし、それを払拭するためにも、音楽活動で応えて欲しい。このところはWebサイトでは元気な姿も確認できる。大人になったクインドンがどんな声で、どんな内容を歌うのか。非常に興味の湧くところである。

(2015.07.05)

[1]この楽曲と④のクレジットに“Houston”という名前を発見。マーカス?(Marques Houston)と思ったが、どうやらマーカスの母:キャロライン(Carolyn Houston)のようである。

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