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『Portrait』(1992)1992
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Review

-まるで合宿生活-

この作品のために、メンバー全員が1つの家に引越し。共同生活の中で制作したそうだ。西海岸、中西部、東海岸という3つの地区出身の4人が集まったのだからと言って、1つの家で共同生活する必要はないのだろうが、家族のような雰囲気の中で、一体感を作り出すことが大切だったのだろう。

-伸び伸びと歌う-

そんな意気込みを感じ取れるのがデビューシングルだった③「Here We Go Again!」。リードが取れる3人が実に楽しそうに伸び伸びと歌っている。マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)「I Can't Help It」をサンプリングし、92年当時の“成熟したニュージャック”に乗せる、というチャートを狙った作りは見えてしまう。また、もう少しサンプリングの音を大きくしてもらっても良かったかとも思うのだが、そんなことは些細なことで、素直に良い曲と認めたい。

-アップは前半に集中-

前半はのようなアップが中心。スピード感に太いボトムが気持ち良い①「Commitment」、セカンドシングルにもなった②「Honey Dip」、スココン系(!?)の音が切ないミディアムの④「You」と、まさしく当時の音がズラリと並ぶ。もちろん時代は感じるが、今聴いても充分踊れる完成度である。⑪「Feelings」なんかはシングルカットしても面白かったのではないかと思える、ポップで聴きやすいダンサブルな楽曲だ。

-リードを歌う3人のバランス-

トラックを中心に話を進めたが、もちろん歌声も魅力的。彼らの歌声を楽しめるのはやはりスロウだろう。完成度の高いInterludeであるの後からスロウが2つ。ジェラルド・アルブライト(Gerald Albright)の哀愁漂うSAXの音色に丁寧なコーラスが寄せてくる⑥「On And On」を歌うのはフィリップ。ソフトに優しく、あくまでも紳士的。ささやくような歌い方がこの曲によく似合う。⑦「Precious Moments」でリードを取るのはアーヴィング。こちらは曲の雰囲気も手伝ってなのだろうが、非常に官能的に歌い上げている。その2人が歌っている⑫「Day By Day」(3rdシングル)は、まさしく2人の長所を活かした楽曲になっている。

もう1人のリード、エリックが歌うのは⑭「Yours Forever」。こちらは甘い系、ラルフ・トレスヴァント(Ralph Tresvant)か!?と思ってしまった。しかし、これまた楽曲にシックリとはまっている。

-ひとつだけ…-

決して熱唱系はヒトリもいないのだが、それぞれが自分の仕事をこなしている(=まるで、楽曲ごとにその音に当てはまる声を選んでいるような印象)という、グループであることの意義を感じることができる彼ら。これが共同生活から産まれたものなのだろうか。そのような理由から、この作品のみでフィリップが脱退してしまったのは、非常に残念に思える。

(2010.08.29)

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